2008 Fiscal Year Annual Research Report
EBウイルス産生感染の分子機構とそれをサポートする宿主因子
Project/Area Number |
20390137
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
鶴見 達也 Aichi Cancer Center Research Institute, 腫瘍ウイルス学部, 部長 (90172072)
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Keywords | TORC / EBウイルス / 転写 / 再活性化 |
Research Abstract |
EBVは多くの健常成人のBリンパ球などに潜伏感染しており、刺激により再活性化し、溶解感染に至る。再活性化の機序を明らかにすることはウイルス拡散の防止にもつながり、意義深い。EBVの再活性化には前初期遺伝子のひとつであるBZLF1が必要かつ十分であることが知られており、そのプロモーターはTPAやカルシウムイオノフォアなどにより強く誘導されるほか、BZLF1蛋白質は自身のプロモーターに結合してさらに発現を高める。今回我々は、CREBの転写補助因子であるTORC2(Transducer of Regulated CREB 2)がBZLF1プロモーター活性を強力に促進することを見いだした。TORC2はBZLF1プロモーターのZII及びZIIIと呼ばれるシスエレメントを介してBZLF1プロモーターを活性化していた。これらのシスエレメントにはそれぞれCREB及びBZLF1蛋白質が結合することが知られている。このデータに加え、免疫沈降、ChIP、Gal4レポーターアッセイなどの結果から、TORC2はCREBだけでなくBZLF1蛋白質とも結合し、BZLF1プロモーターを活性化させていることが強く示唆された。またTORC2はカルシニューリンにより脱リン酸化を受けて細胞質から核内に移行し、BZLF1プロモーターを活性化することも明らかになった。さらに、カルシニューリン阻害剤であるサイクロスポリンAはBZLF1の発現を強く抑制した。EBウイルス潜伏細胞にTORC2を過剰発現させるとBZLF1蛋白質の発現は強くなり、逆にsiRNAによってTORC2をノックダウンするとBZLF1蛋白質の発現は弱まった。以上のことから、EBウイルスはカルシニューリン-TORC2のシグナル経路を巧みに利用してBZLF1プロモーターを制御し、ウイルスを再活性化させるということが分かった。
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