2009 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸薬の血管拡張作用に及ぼすALDH2遺伝子多型の影響に関する薬理遺伝学的研究
Project/Area Number |
20390160
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笹栗 俊之 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (30261209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 宜一 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (60346773)
高橋 富美 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50274436)
松村 潔 九州大学, 大学病院, 助教 (70285469)
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Keywords | 硝酸薬 / ニトログリセリン / 二硝酸イソソルビド / 狭心症 / 血管拡張 / 2型アルデヒド脱水素酵素 / 遺伝子多型 / 薬理遺伝学 |
Research Abstract |
近年、硝酸薬ニトログリセリン(GTN)から、血管拡張作用を担う一酸化窒素(NO)を遊離させる反応を触媒する酵素として、ミトコンドリアに存在する2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が候補に挙げられている。これが正しければ、遺伝子多型(E487K)によりALDH2の活性を欠く人が数%存在する日本人では、狭心症等の治療にとって問題となる可能性がある。 そこで、ALDH2の遺伝子多型によってGTNの血管拡張作用に差があるかどうかを明らかにするため、平成21年度より臨床試験を開始した。前年度に作成した試験プロトコールに従い、年度末までに、60名の健常成人(年齢24±1.6歳、男性53名・女性7名)を対象として、GTN(0.3mg)または二硝酸イソソルビド(ISDN:1.25mg)を口腔内に投与した後の上腕動脈径の変化を超音波断層法にて測定した。ALDH2遺伝子型(E/E:高活性型、E/K:低活性型、K/K:無活性型)はPCR-RFLP法にて決定した。 GTNにおいても、ISDNにおいても、最大血管拡張率には多型間で有意差が認められなかった。しかしながら、GTNにより最大拡張に至るまでの時間は、E/Eでは267±58.2秒、E/Kでは288±67.1秒、K/Kでは332±74.3秒であり、E/Eに比べてK/Kでは有意に拡張が遅延した。一方、ISDNによる血管拡張には時間差を認めなかった。これらはあくまで中間解析の結果であるが、GTNの血管拡張作用にALDH2が有意に関与していること、ALDH2に依存しないNO遊離機構も存在することが示唆された。結論を示すには、さらに被験者数を増やす必要があり、平成22年度にも試験を継続する。
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Research Products
(15 results)