2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素の化学形態別摂取による発癌リスク評価-新規発癌機序を含めた学際的アプローチ
Project/Area Number |
20390173
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20160393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 教授 (50182572)
藤谷 登 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (10156888)
立川 眞理子 日本大学, 薬学部, 准教授 (90139098)
畑 明寿 千葉科学大学, 危機管理学部, 助手 (10433690)
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Keywords | ヒ素 / 環境汚染 / 食品安全 / 発がん / リスク / 毒性 / ジメチルアルシン酸 |
Research Abstract |
ガリウムヒ素を原料としたリサイクル工場で発生したアルシン中毒症例について、血清、尿の形態別分析をHPLC-ICP-MSで行った。症例は、20代男性で、勤務終了3時間後に血尿に気づき、34時間後に来院した。入院時、強い貧血、血尿、腎、肝機能障害が観察され、赤血球4パックと補液により著明に改善し5日後退院した。入院時の血清の総ヒ素、亜ヒ酸、ヒ酸、モノメチルアルソン酸(MMA)、ジメチルアルシン酸(DMA)の濃度はそれぞれ、244.8、45.8、5.2、17.9、9.3μg/lであった。亜ヒ酸、ヒ酸、MMAの半減期は30.1、43.0、96.3時間であった。退院時の尿の亜ヒ酸、ヒ酸、MMA、DMAの濃度はそれぞれ、384.5、20.8、547.4、1816.3μg/g creatinineであった。アルシンは、速やかに亜ヒ酸を経てMMA、DMAに代謝されることが明らかになった。 バングラデシュのヒ素汚染地区住民の尿中形態別ヒ素濃度を測定したところ、無機ヒ素曝露バイオマーカーからDMAを除いても曝露評価が可能であると考えられた。 ジメチルヒ素-GSH複合体に硫黄転移酵素を作用させたところ、容易にジメチルモノチオアルシン酸(DMMMTA)へと変換されることが推定された。DMMMTAは生体微量元素の存在下で、速やかに金属錯体形成を介してDMAへ変換されることが示された。 ラットにDMAを投与したところ胆汁からDMMTAが検出され、抗生物質で腸内細菌叢を破壊した群においてDMMTAの尿中濃度の減少がみられ、膀胱上皮細胞の増殖が低下した。DMMTAは、DMA誘発ラット膀胱発がんにおける原因物質であると考えられた。 海産物の化学形態別ヒ素分析法を開発するためにヒ素抽出法の検討を行った。細胞破砕ビーズを用いた抽出法が、魚類と藻類にて実用性を満たす高い回収率を示した。
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Research Products
(10 results)