2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素中毒の予防と根絶を目的とする無機ヒ素の無毒化に関する研究
Project/Area Number |
20390174
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山内 博 Kitasato University, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久枝 良雄 九州大学, 工学部, 教授 (70150498)
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30321897)
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Keywords | ヒ素 / 無毒化 / メチル化 / ビタミンB12 / 人工的化学合成 / 細胞毒性試験 / 酸化的DNA損傷 / 廃棄処理技術 |
Research Abstract |
現在、推定の慢性ヒ素中毒患者は約8000万人、そして、先端産業ではヒ素系化合物半導体や液晶基板硝子の製造に猛毒の三酸化ヒ素が年間に約5万トン使用されている。EUの有害物質規制により、未使用の無機ヒ素化合物が一般環境に過剰蓄積されることが予測されており、この猛毒のヒ素化合物に対する安全な管理システムを早急に確立する必要がある。さらに、日本と中国内には約200万発のヒ素化学兵器が存在し、その処理作業が稼働されると大量の無機ヒ素が生成され、この無機ヒ素の安全な処理対策も重要課題である。本研究では無機ヒ素のメチル化に天然のヒ素メチル基転移酵素を応用する、無毒化処理システムを我が国が独自に考案した。この手法を社会に汎用させ、無機ヒ素による健康被害の防止や軽減に貢献できる新規の手法・技術の獲得を目的とした。 我々が目的とする無機ヒ素の無毒化物は魚介類に高濃度含有している無毒のアルセノベタイン(AsB)である。無機ヒ素のAsBへの変換に関して、メチル化ビタミンB_<12>の天然型と天然B_<12>の基本骨格部分のみを残した人工B_<12>を用いて検討した結果、トリメチル化ヒ素への変換率は99%、このトリメチル化ヒ素にハロ酢酸を反応させた結果、100%のAsB変換を達成した。 現在、本化学合成法では多量のAsBの獲得は難しく、このAsBを用いた細胞毒性試験の成果は得られていない。しかし、AsBの安全試験法の確立のために、市販のメチルヒ素化合を用いたシステムの構築を試みた結果、ヒト子宮頸がん細胞(HeLa)の有効性、また、細胞から抽出したDNA中8-OHdGを用い酸化的DNA損傷を比較した結果、無機ヒ素に比較してメチルヒ素化合物の影響は軽減されることを確認した。すなわち、無機ヒ素のメチル化による無毒化処理手法は、無機ヒ素による健康被害の予防や改善の取り組みに対して有効であると考える。
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