2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素中毒の予防と根絶を目的とする無機ヒ素の無毒化に関する研究
Project/Area Number |
20390174
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山内 博 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久枝 良雄 九州大学, 工学部, 教授 (70150498)
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
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Keywords | ヒ素 / 無毒化 / メチル化 / ビタミンB12 / 人工的化学合成 / 細胞毒性試験 / 酸化的DNA損傷 / 廃棄処理技術 |
Research Abstract |
無機ヒ素は自然由来からの曝露が深刻で大規模な慢性中毒がアジアと中南米諸国で発生している。一方、産業界では液晶基板硝子とヒ素化合物半導体への需要があり職業性曝露と廃棄物の問題、さらに旧日本軍が製造したヒ素化学兵器が日中両国に存在し、健康被害も発生している。本研究は三酸化二ヒ素(As_2O_3)およびガリウムヒ素(GaAs)、ヒ素化学兵器(As-CW)から合成したアルセノベタイン(AsB)の毒性試験、ついで、ヒ素中毒の予防や改善対策に対する無毒化処理の将来構想についても検討した。 AsBに変換する無機ヒ素は様々な処理物から生成されるが、どのような過程をへても最終的に無機の3価と5価ヒ素であれば、AsBへの合成が可能であるが、社会での広い普及・実用化に対しては効率化や経済性の問題の解決が望まれる。他方、従来のヒ素の廃棄物処理は隔離保存であるが、AsBによる廃棄処理では処分場が不要な自然還元・回帰も視野に入れることが可能と考えられる。 合成AsBの細胞毒性試験の結果では、CCK-8で測定したHeLaおよびHL-60細胞の生存率はAs_2O_3では濃度依存的に低下するのに対し、3種類の合成AsBは明確に減毒されていた。さらに、V79細胞への6日間曝露でも同様の結果であった。 As_2O_3およびGaAs、As-CWから合成したAsBに対しての細胞毒性試験を行った結果、どのAsBも共通して明確に減毒されていた、As_2O_3にアポトーシスの誘導、活性酸素種の誘発による酸化ストレスなどが認められたがAsBにこの現象は認められなかった。すなわち、異なる無機ヒ素から合成したAsBは無毒化ヒ素である結果が示された。他方、AsBの合成には効率化や経済性の問題が課題としてあり、なお、AsBとしての廃棄処理には処分場が不要な自然回帰の期待が望まれ、国際社会への啓蒙活動や研究の充実や拡大が必要と考える。
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Research Products
(9 results)