2008 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬の抗認知症効果を担う脳内薬効メディエータに関する研究
Project/Area Number |
20390197
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松本 欣三 University of Toyama, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常山 幸一 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 准教授 (10293341)
田中 謙 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (60418689)
村上 孝寿 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (00377269)
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Keywords | dementia model / Kampo medicine / mediator(s) / anti-dementia drug / emotional disoders / Senescence-accelerated mouse / aging / vascular endothelial growth factor |
Research Abstract |
本研究は,釣藤散を中心に漢方薬の抗認知症効果に関わる脳内メディエータを単離同定し、その機能を解明することにより老年期認知症の臨床治療に「即応用」可能な新規の方法論を創出することを目的とする。本年度は老化促進マウス(SAMP8)を用い,脳虚血障害と老化要因を併せ持つ認知症病態モデルの作製及び本モデルにおける漢方薬釣藤散の効果を検討した。20週齢雄性SAMP8の両側総頸動脈を20分間結紮後,再灌流した(SAMP8-T2V0)。SAMP8の対照群にはSAMR1を用いた。手術3日後より薬物投与を開始し,投与開始の2週間後より行動試験を行った。行動試験のうち,学習記憶行動は水迷路試験で,情動行動は高架式十字迷路試験で評価した。偽手術SAMP8群(SAMP8-sham)ではSAMR1群と比べ有意な学習記憶障害が発現した。SAMP8-T2V0群の学習記憶障害はSAMP8-shamと比べに悪化傾向がみられたが,統計的に有意ではなかった。釣藤散(750mg/kg/日)投与により,SAMP8-shamおよびSAMP8-T2V0群の学習記憶障害は何れも有意に改善された。一方,SAMP8-shamおよびSAMP8-T2V0群ではSAMR1と比べ,不安情動行動の有意な低下が認められた。不安情動レベルの低下は釣藤散(750mg/kg/日)投与により改善されたが,漢方薬冠元顆粒(100mg/kg/日)は無効であった。以上から,釣藤散は老年期認知症の中核症状や周辺症状にも有効である可能性が示唆され,釣藤散処置動物の脳組織を抗認知症効果の脳内メディエータの探索に利用可能と判断された。また予備試験から,環境刺激が釣藤散と同様に脳虚血動物の学習記憶障害を改善し,その効果に血管内皮増殖因子系(VEGF)の関与が示唆された。このことから,VEGFが脳内メディエータ候補の一つになり得ると推測された。
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Research Products
(8 results)