2010 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬の抗認知症効果を担う脳内薬効メディエータに関する研究
Project/Area Number |
20390197
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松本 欣三 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常山 幸一 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 准教授 (10293341)
田中 謙 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (60418689)
村上 孝寿 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (00377269)
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Keywords | dementia model / Kampo medicine / vascular endothelial growth factor / neuroplasticity / aging / platelet derived growth factor / ischemia |
Research Abstract |
本研究は,釣藤散を中心に漢方薬の抗認知症効果に関わる脳内メディエータを単離同定し、その機能を解明することにより老年期認知症の臨床治療に「即応用」可能な新規の方法論を創出することを目的とする。これまでに我々は,虚血処置を施した老化促進動物SAMP8を用い,漢方方剤の釣藤散や漢薬の冠元顆粒の抗認知症効果には神経可塑性シグナリング系および血管内皮細胞成長因子VEGF系が関与することを示唆し,薬効メディエータとしてのVEGFの可能性を明らかにした。最終年度はVEGFファミリーに属する血小板由来成長因子PDGF系と認知障害との関連並びに釣藤散投与の影響を検討した。またこれらの成長因子(VEFG,PDGF)と神経可塑性シグナリング系の起始部に相当するNMDA型グルタミン酸受容体(NMAR)との共存性についても検討した。ウエスタンブロット法により脳内PDGF-A及びその受容体PDGFRαの発現レベルを測定した結果,認知行動障害を呈したSAMP8ではそれらの発現量が有意に低下していることが明らかになった。一方,釣藤散(750mg/kg/day)処置によって認知行動障害が改善されたSAMP8群では,PDGF-A及びPDGFRα発現量の有意な回復が認められた。これらの成績は,VEGF及びVEGF受容体(VEGFR)に関する前年度の結果と一致し,釣藤散の抗認知症効果にVEGF及びPDGF系が関わる可能性を示唆する。更に免疫組織化学的検討を行った結果,VEGF及びPDGFは何れもNMDARIを発現する大脳皮質神経細胞中に共発現しているだけでなく,VEGFR及びPDGFRαもNMDARIと共存していることが明らかになった。これらの成績から,釣藤散や冠元顆粒の抗認知症効果にはVEGF/VEGFR及びPDGF-A/PDGFRα(チロシンキナーゼ型受容体)シグナリング系を介したNMDA受容体の機能修飾機構が存在する可能性が高いと推測された。
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Research Products
(21 results)