2008 Fiscal Year Annual Research Report
肝炎ウイルスモデルを用いた抗原特異的リンパ球と肝障害の炎症カスケードの解明
Project/Area Number |
20390203
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
木村 公則 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (70397339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80273358)
永木 正仁 岐阜大学, 医学部附属病院, 臨床教授 (30293559)
齋尾 征直 岐阜大学, 医学系研究科, 准教授 (40242721)
倉知 慎 東京大学, 医学系研究科, 助教 (00396722)
上羽 悟史 東京大学, 医学系研究科, 特任助教 (00447385)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / CTL / ケモカイン / 肝障害 / 接着因子 |
Research Abstract |
現在国内でB型肝炎ウイルス(HBV)感染者数は約150万人ともいわれ、これらのウイルス感染者の一部は慢性肝炎を経て肝硬変、肝細胞癌を生じる。肝細胞癌は最近の調査で男性において癌死原因の3位、女性においては4位をしめ、HCV感染者とともに治療の対策が急務の感染症の一つである。肝炎の進行を防御する効果的な抗ウイルス療法にはウイルス合成阻害というウイルス側の因子とともに宿主側の免疫反応も重要である。ウイルスを排除するには抗原特異的なリンパ球特に、細胞障害性T細胞(CTLs)の働きが重要であり今回我々はCTLsや炎症細胞の肝臓内動態と肝障害機序の関与に注目し抗肝炎治療の新たな可能性について検討した。宿主の効率よいHBVに対する免疫反応を誘導するには、CTLsの機能動態解析が、必須であり今回我々は、今まで不明な点が多いCTLsがどのような機構で肝細胞内に浸潤するかを研究課題とした。今回、このような細胞浸潤の過程で重要なケモカインと肝障害の機構に着目し、肝障害の制御を目的として抗肝炎治療の新たなストラテジーとしての可能性を検討した。A)HBVトランスジェニックマウスを用いた劇症肝炎モデルにおけるケモカインと肝障害の関与今年度の研究成果で、HBs抗原を肝細胞に発現したHBVTg miceにHBs28-39のエピトープを認識したCTLs cloneを投与することによりヒトの劇症肝炎類似の現象を誘導するマウスモデルを用いて、ケモカイン、特にCCL2,CCL5の発現が肝臓内で上昇していることを認めた。また、実験経過において接着因子であるCD44が、CTLの肝細胞内への浸潤に重要であることを示した(J.Gastoenterology,2009)。CD44は、リンパ球や白血球などに発現しており、HBs抗原特異的CTLsにも高発現しているが、今回の実験でCTLs側のCD44よりも、類洞壁内皮細胞でのCD44の発現が重要であると判明した。CD44KOxHBVTg miceでは、CTLs投与初期において明らかに、肝臓内への浸潤数が減少していた。しかし、投与初期では肝障害のレベルを抑制するも、後期では肝細胞のアポトーシスを増強し肝障害の悪化を認めた。一方で、このCD44のligandのひとつであるosteopontin(OPN)が肝臓内で発現が上昇しており、血清中にも増加していた。これらの結果を踏まえて、CTLsを投与する前に、抗CCL2、抗CCL5、抗OPN(M5)抗体を投与したところ、抗OPN抗体および抗CCL2抗体投与群で肝機能の低下を認めた。次年度以降に詳細なメカニズムの解析を予定している。
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