2009 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎における代謝異常:肝疾患進展への関与とその制御
Project/Area Number |
20390204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 和彦 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 教授 (80240703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四柳 宏 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30251234)
藤江 肇 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90332577)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 肝細胞癌 / インスリン抵抗性 / 肝線維化 / 酸化ストレス / 脂質代謝 |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓を主な標的とするウイルスであるが、多臓器に病変を引き起こすことも次第に明らかになってきている。さらに、C型肝炎の代謝性疾患としての病像が注目されてきている。私たちは、C型慢性肝炎患者とマウスモデルを用いて、C型肝炎において脂質代謝異常やインスリン抵抗性が発生することを明らかにし、その機序を解明してきた。インスリン抵抗性は、C型慢性肝炎の肝線維化進行にも影響を与えることが判明している。本研究では、HCVによってもたらされるインスリン抵抗性や脂質代謝異常が、C型慢性肝炎線維化の進行に与える影響とその機序を検討した。 C型肝炎では、SREBP-1c活性化を介する脂肪酸合成の増加、MTP活性阻害を介する肝からのVLDL分泌の障害、インスリン抵抗性による末梢からの脂肪酸放出と肝への取込み増加、と複合した経路の障害によってC型肝炎では高度の肝脂肪化が発生することが明らかになった。また、脂質代謝関連遺伝子の転写因子である核内受容体PPARαがコア蛋白によって活性化され、肝細胞ミトコンドリア電子伝達系機能障害と相まって、脂肪酸増加→酸化ストレス増加→ミトコンドリア機能障害→脂肪酸増加という負のスパイラルを引き起こし、肝脂肪化やインスリン抵抗性の発生に深く関与していることが明らかになった。また、ミトコンドリア保護作用をもつ免疫抑制剤であるタクロリムスによって、HCVによって引き起こされる代謝異常である肝脂肪化、インスリン抵抗性が改善することも明らかになった。機序の一つとして、C型肝炎で誘導されているTNF-αの増加、SREBP-1c活性化がタクロリムスにより低下することが考えられた。今後のC型慢性肝炎治療法の開発に向けて重要な知見である。
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Research Products
(5 results)