2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20390227
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
斎藤 能彦 Nara Medical University, 医学部, 教授 (30250260)
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Keywords | 心腎連関 / sFLT / Klotho / FGF23 / PIGF / 動脈硬化 |
Research Abstract |
心不全では、心腎連関が注目されているが、その基盤たる分子機序は全く解明されていない。申請者は、過去の予備実験の成果をもとにs FLTとKlotho遺伝子に注目して研究を展開した。 1. s FLT s FLTはVEGFやPIGFの受容体の一つであるFlt-1遺伝子からalternative splicingによって産生される主として細胞外ドメインから構成され、PIGFやVEGFに対する結合能を有していることより、両リガンドに対する内因性の拮抗物質として流血中を循環している。我々は、このs FLTが腎臓で産生され、腎不全症例でその血中濃度が有意に低下すること、またs FLT特異的PCRを作成して腎生検組織中でのs FLTm RNAを検討すると、腎機能の低下に比例して有意に低下することが明らかとなった。 動脈硬化を惹起しやすいアポEノックアウトマウスに5/6腎切除による慢性腎不全モデルを作成すると、血中s FLT濃度が有意に低下し、腎臓組織中のs FLTm RNA濃度も有意に低下し、さらに、動脈硬化の憎悪を認められた。この動脈硬化の憎悪がs FLTの低下に起因することを確かめるために、リコンビナントs FLTを作成し慢性腎不全モデル作成時より投与すると、動脈硬化の悪化を防ぐことができた。 従って、腎不全ではs FLTの産生が腎で低下し、その結果循環しているs FLTが低下、PIGFやVEGFの作用の抑制が阻害され、その結果動脈硬化が憎悪したと考えられ、s FLTが心腎連関の分子機序として一部働いていることが示唆された。 2. Klotho Klothoは老化遺伝子として発見されたが、Ca・P代謝にも重要な働きをしており、KlothoノックアウトマウスではMechberg型の動脈硬化を呈する。また、臨床的には糖尿病性腎症や透析症例においては血管の中膜の石灰化がよく認められKlotho遺伝子の関与が示唆された。 糖尿病性腎症の腎生検組織を対象にKlothoの遠位尿細管での発現を免疫組織学的に検討すると、対照の正常腎組織症例、あるいは同程度に腎機能障害のあるIgA腎症症例より明らかにKlothoの発現が低下していることが確認され、また、Klotho mRNAも糖尿病性腎症では有意に低下していることが示された。糖尿病性腎症モデルであるSTZマウス腎臓では有意にKlotho遺伝子の発現が低下していた。Klothoも心腎連関をつなぐ鍵分子の一っである可能性が示唆された。
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