2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20390228
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 元昭 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30265798)
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Keywords | アミノ酸 / 酸化ストレス / 虚血再灌流障害 |
Research Abstract |
ミトコンドリアでの過剰な活性酸素の産生、脂質過酸化、酸化的DNA障害は心臓の病的リモデリングを促進することが様々な心疾患モデル動物で示されてきた。このように前臨床試験においては抗酸化剤の心不全治療に対する有効性が報告されているにもかかわらず、臨床試験ではビタミンEなどの抗酸化剤が心不全の予後を改善させるという結果は得られなかった。この矛盾は、活性酸素の持つ2面性によって説明される。活性酸素は100%悪者ではなく、シグナル伝達分子として働いて抗酸化ストレス応答機構を活性化させる作用を持つ。我々はミトコンドリアのaldehyde dehydrogenase 2(Aldh2)活性を阻害したトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの心筋ミトコンドリアマトリックスは酸化状態に傾き、電子顕微鏡下での観察においてもミトコンドリア内膜構造の障害とマトリックスへの沈着物を認めた。意外なことにこのトランスジェニックマウスの心臓の収縮機能は心エコー上、正常に保たれ、冠動脈結紮(虚血)・再灌流障害による心筋障害に対してミトコンドリア障害のない正常野生型マウスよりむしろ抵抗性を示した。キャピラリ電気泳動質量分析装置を用いたメタボローム解析の結果、酸化ストレス状態にあるミトコンドリアからのシグナルによって心筋細胞のアミノ酸代謝経路の活性化が起こり、還元型グルタチオンを高いレベルで維持することによって新しい心筋細胞のホメオスターシスが維持されていることを明らかにした。さらに、その背景にeIF2α-ATF4シグナルが関与していることを明らかにした。
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Research Products
(7 results)