2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎疾患における小胞体ストレス応答の意義の解明と新規治療戦略の開発
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20390235
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
北村 正敬 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (90333062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姚 建 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (50303128)
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Keywords | 小胞体ストレス / シグナル伝達 / 細胞死(アポトーシス) / Akt / mTOR / IRE1 / 3'-deoxyadenosine / 尿細管傷害 |
Research Abstract |
平成20年度から22年度にかけて行った小胞体ストレス応答(UPR)の"Light Side"に関する検討に加え、本年度はその"Dark Side"に係る新規シグナル伝達系、特にmTORの役割に焦点を当てた検討を行うとともに、細胞障害性UPRを修飾し、小胞体ストレスによる組織細胞障害を緩和する物質に関する検討を行った。 1.小胞体ストレスによる組織細胞障害、特にAkt,mTOR等の役割についての解析 細胞応答に多彩な機能を有するAktとmTORが、小胞体ストレスによる細胞死に重要な役割を果たすことを明らかにした。具体的には、小胞体ストレスはmTORC1の活性化を介してAktのリン酸化を抑制し、この経路が選択的にIRE1-JNK経路を活性化することで細胞死を引き起こすことを、in vitro,in vivoの系で明らかにした。このことは、mTORC1の阻害薬が小胞体ストレス関連疾患の治療に有用であることを示唆する。以上の知見は、『Cell Death & Differentiation』(Kato et al.2012)に論文として発表した。 2.細胞障害性UPRを修飾し、小胞体ストレスによる組織障害を緩和する物質に関する検討 adenosine類縁体である3'-deoxyadenosine(3DA)が、小胞体ストレスによる細胞障害を抑制することを見出した。この物質は、UPR主要3経路のうちATF6経路及びIRE1経路を阻害したが、PERKの早期活性化には影響を与えず、その下流のelF2αの活性化はむしろ増強することで、翻訳抑制によるストレスの緩和を誘導した。このことは、3DAが小胞体ストレス関連疾患の治療に有用であることを示唆する。以上の知見は、『Cell Death & Differentiation』(Kitamura et al.2011)に論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究実施計画」に記した2項目の検討事項をぼぼ完全にクリアし、その研究成果を2報の論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の流れに沿って、小胞体ストレスによる組織細胞傷害を緩和する物質の探索およびそのin vitro, in vivoでの傷害抑制効果(分子メカニズムおよび治療効果)の検討を継続する。
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