Research Abstract |
本研究は,脳活動とそれを支える脳循環代謝システムの連動について,その局所原理と全体像を,異なる時空間スケール,すなわち,(1)微視的時空間スケールと(2)巨視的時空間スケールから統合的に解明することを目的としている。平成21年度,(1)に関しては,2光子顕微鏡を用いて,神経活動領域を描出する実験系をくみ上げた。蛍光量子ドット(Qdot 655 ITK PEG)を静脈内に投与し,体性感覚刺激を行い,活動領域の微小循環系3次元構造の変化を描出した。その結果,脳表の細動脈と脳実質内の皮質穿通動脈ないし終末細動脈の間には,脳賦活に対する時空間応答パターンの明らかな相違があることが明らかとなった(血管反応は前者から始まり,後者は時空間的に広範囲に広がる)。この観察から,血管作動性信号は,神経活動のfocusである脳実質内微小血管領域から,脳表動脈へと逆行性に伝搬することが示唆された。(2)に関しては,多波長同時観察ユニット(Quad-View)を用いて3-4波長の反射光画像を同時に取得,画像間演算でヘモグロビンの濃度変化のマッピングを行った。また,活動領域で微小電極を用いて細胞外電場電位を測定し周波数解析にてMulti-Unit Spiking Activity(MUA)と高周波数電場電位(gamma-band LFP)と低周波数LFPとに分離した。その結果,脳循環反応は,皮質活動の異なるパターンにおいては,LFPのamplitudeというより(低周波数LFPを反映),MUAとgamma-band LFPと密接に関係していることが示された。これは,Brain Mappingに用いられる脳循環反応が,背後にある大脳皮質活動のうち,どのような神経活動の要素を反映しているかを理解する上で極めて重要な結果であると考えられた。
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