2010 Fiscal Year Annual Research Report
一塩基変異を認識し神経疾患原因遺伝子だけを特異的に抑制するRNAi技術の確立
Project/Area Number |
20390251
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
北條 浩彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所神経薬理研究部, 室長 (60238722)
|
Keywords | RNAi / 変異遺伝子 / 神経変性疾患 / 対立遺伝子特異的抑制 / ハンチントン病 |
Research Abstract |
RNAiは、簡便で優れた遺伝子発現の抑制技術であり、すでに基礎研究分野では一般的なツールとして利用されている。さらに医療分野においてもRNAi治療薬の登場が期待されている。これら従来のRNAiは、ターゲット遺伝子に対してその発現を強力にノックダウンする目的で設計され使用されている。そのため正常型対立遺伝子であっても変異型対立遺伝子であっても目的の遺伝子は強力にノックダウンされる。しかし、そのような対立遺伝子を区別しない強力な抑制が必ずしも有用とはかぎらない。医療応用の場合、正常型対立遺伝子のRNAiノックダウンによる副作用を考えると、正常遺伝子はそのままで病因となる変異型対立遺伝子だけを特異的にノックダウンすることが重要になる。そこで本研究は、疾患原因遺伝子上の変異を目印に、その変異を持った原因(対立)遺伝子だけを特異的にノックダウン(正常型遺伝子には影響しない)する次世代のRNAi誘導技術の確立を目指した。H22年度は、代表的なトリプレットリピート病であるハンチントン病の原因遺伝子、変異型ハンチンチン遺伝子を対象に研究を推進した。トリプレットリピート病は繰返し配列の異常伸長が原因で発症する。そのため、病因となる繰返し配列自身をRNAiのターゲットにすることは難しい。そこでハンチンチン遺伝子内の一塩基多型(SNP)を新たなターゲットとして、変異型ハンチンチン遺伝子を特異的にRNAiノックダウンする戦略を試みた。本研究の結果、SNPを識別し、疾患原因遺伝子を特異的にRNAiノックダウンするsiRNAの設計に成功した。さらに、変異型ハンチンチン遺伝子上のSNPのタイピングやそのハプロタイプをすみやかに判定する新しい技術も確立した。これらの成果は、テーラーメイドRNAi治療の実現に大きく貢献すると考えられる。
|