2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗アポトーシス遺伝子MCLー1の白血病幹細胞化における役割
Project/Area Number |
20390272
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 敏浩 九州大学, 病院, 講師 (70343324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤司 浩一 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80380385)
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / MCL-1 / FLT-3 / アポトーシス |
Research Abstract |
抗アポトーシス蛋白bcl-2ファミリーに属するMCL-1は造血系に特異的に機能し、造血幹細胞の生存維持に重要な役割を担っている。我々はMCL-1の急性骨髄性白血病(AML)発症に関する役割について解析した。MCL-1は正常造血細胞より白血病細胞に高発現しており、さらに未熟な白血病幹細胞分画(CD34^+CD38^-細胞)でその発現量は最も高く、AML幹細胞の生存維持に重要であることが示された。正常造血ではMCL-1の発現調節はFLT3シグナルを介して制御される。AML予後不良因子の1つに、FLT3のinternal tandem duplication(ITD)異常があり、このFLT3/ITDにより恒常的なFLT3シグナル活性化が誘導され、AMLの発症原因と考えられる。FLT3/ITD変異AML症例では、FLT3遺伝子正常のAMLと比較してMCL-1の発現量は有意に上昇していた。即ち、FLT3/ITD変異による恒常的FLT3シグナル活性化がMCL-1の高発現を誘導し、これが白血病幹細胞の生存維持の強化など白血病発症に関与する可能性を示している。FLT3/ITD変異AML細胞株をFLT3阻害剤で処理すると容量依存的にMCL-1発現量が低下し、細胞株はアポトーシスに導かれた。さらにMCL-1 shRNAを細胞株に導入しMCL-1発現量を低下させても、この細胞株はアポトーシス死した。一方、MCL-1を細胞株に過剰発現させた後にFLT3阻害剤を作用させると、アポトーシスに導かれる細胞数は有意に減少した。次に純化した造血幹細胞に、FLT3/ITD変異およびSTAT5結合部位を欠如したFLT3/ITDを遺伝子導入し、MCL-1発現量を比較検討した。FLT3/ITDでは空ベクターや正常FLT3と比較して約9倍のMCL-1発現を誘導した。一方、STAT5結合部位を欠如したFLT3/ITDでは、MCL-1を誘導できず、MCL-1発現にはSTAT5の関与が重要であることが示された。FLT3/ITD細胞株にsTAT5 siRNAを遺伝子導入すると、Mcl-1の発現量は低下した。以上よりFLT3/ITD変異AMLの白血病機構として、FLT3の恒常的活性化経路が正常とは異なるSTAT5経路を介してMCL-1高発現を誘導することで白血病発症に深く関与することが明らかになり、MCL-1およびSTAT5を標的とした白血病治療の可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)