2010 Fiscal Year Annual Research Report
GATA1遺伝子変異による一過性白血病の分子機構の解明と分子標的療法の開発
Project/Area Number |
20390289
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊藤 悦朗 弘前大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20168339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 力 弘前大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50195731)
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Keywords | GATA1 / 白血病 / 転写因子 / ダウン症候群 / TAM / 発現クローニング / GATA1s / 発現量 |
Research Abstract |
GATA1変異による一過性白血病(TAM)発症の分子機構の解明し分子標的療法を開発するために、本年度は以下の研究を進めた。 1.ダウン症に伴うTAMの患者のほとんどにGATA1の遺伝子異常が認められる。遺伝子変異の結果、完全長のGATA1タンパクが全く産生されなくなり、N末端の転写活性化ドメインを欠くshort form GATA1(GATA1s)のみが発現している。しかし、GATA1遺伝子変異がGATA1sの発現量に影響を与えるのかどうかは知られていなかった。この問題を解くために、まずGATA1の転写産物によってGArA1変異を分類した。TAM症例でみられた変異を導入したGATA1のcDNA発現ベクターおよびmini gene発現ベクターを作成して、培養細胞に発現させて、in vitro系でGATA1s mRNA量とGATA1sタンパク量を解析した。その結果、GATA1遺伝子の変異はGATA1sタンパクの発現量に影響し、遺伝子変異からGATA1sタンパクの発現量が予想できることが明らかになった。 2.GATA1sの発現量がTAMの表現型に与える影響をみるために、GATA1変異を高発現変異(GATA1s high)と低発現変異(GATA1s low)の2群に分類した。2003年~2008年の間に我々が遺伝子解析を行い、GATA1変異を認めた66例について、予想されるGATA1s発現量からGATA1s highとlowの2群に分け、臨床情報を解析した。その結果、GATA1s lowグループでは白血病(ML-DS)に移行するリスクが高く(P<.001)、白血球数が低い(P=.004)ことが明らかとなった。これらの結果は、GATA1s発現量がTAMの病態や予後に関与していることを示唆いるが、今後前方視的研究で検証を重ねていくことが重要であると思われる。
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