Research Abstract |
1. EBウイルス潜伏関連抗原と宿主免疫反応の解析 平成21年は,本邦14施設,海外1施設から検査依頼のあったEBウイルス関連T/NK細胞増殖症の臨床検体を解析し,診断を行い,新たなデータを蓄積した.本疾患の診療拠点として診断と治療方針決定にかかわった. 2. ウイルス感染細胞の宿主免疫回避と全身性炎症誘導機序の解析 当該患者からEBウイルス感染T細胞を樹立し,培養中の形質変化と,細胞機能について細胞障害活性および炎症性サイトカイン産生について解析を行った(論文投稿中).樹立したNK細胞株は,細胞障害性は低いが,炎症性サイトカイン産生を起こすことが分かり,本症の炎症性機序への関与が示唆された. 3. EBウイルス潜伏感染の生物学的意義の解析 内因性レトロウイルスのHERV-K18の発現は明確な発現が認められなかったため,研究の継続を断念した.比較検討のために用いたヘルペスウイルス,ヒト乳頭腫ウイルスや軟属腫ウイルスなど潜伏・持続感染においては樹状細胞の低下と,MIP-3αなどの遊走因子発現低下がみられ,ウイルス感染細胞の生存を許容する微小免疫環境についての新知見を得た(論文投稿中).この機序の解明は,ウイルス特異的免疫療法につながるものと期待される. 4. EBウイルス関連疾患の臨床統計に関する研究 海外から依頼のあった臨床検体,および海外での招聘講演の際に台湾,中国,シンガポール,ペルーにおけるEBウイルス関連T/NK細胞増殖症の発症例につき検討する機会を得た.平成22年度は,タイ,ミヤンマーで講義を行う機会に,本症の発生状況について調査を行う予定である. 5. 新規治療法に関する研究 HDAC阻害作用を持つバルプロ酸ナトリウムがEBウイルス感染細胞株の細胞周期にG1 arrestを誘導して,細胞増殖を停止させるメカニズムを明らかにした(論文投稿中).この結果は,本症の治療にHDAC阻害薬の効果が期待できることを示す.
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