2009 Fiscal Year Annual Research Report
陽子線・炭素線の生物学的効果に関する基礎的比較・検討
Project/Area Number |
20390327
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菱川 良夫 Kobe University, 医学研究科, 客員教授 (20122335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 昌雄 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (50210018)
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (30346267)
出水 祐介 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50452496)
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Keywords | 癌 / 粒子線治療 / 陽子線 / 炭素線 / 生物学的効果 / 細胞老化 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
1.照射による細胞老化の評価 前年度に得られた研究成果である「線種による照射後の細胞および形成されるコロニーの形態の差異」が細胞老化(senescence)によるものではないかと考えた我々は、細胞老化マーカーとして知られる細胞老化関連ベータガラクトシターゼ(SA-β-gal)にて照射後培養細胞(HSG:唾液腺癌)を評価した。X線・陽子線・炭素線いずれの線種においても、線量依存性にSA-β-gal発現の上昇を認めたが、線種による差異は明らかではなかった。 2.照射による活性酸素種発生の比較 次に我々は、線種による活性酸素種発生の違いが「線種による照射後の細胞および形成されるコロニーの形態の差異」に関連しているのではないかと考えた。活性酸素種は放射線の生物効果において重要な役割を演じているが("間接効果"と呼ばれる)、生物効果全体におけるその割合は線種によって異なる。まず、照射単独における活性酸素種発生を測定したところ、X線>陽子線>炭素線であり、発生量は線量依存性に増加した。これは従来から言われている低LET(線エネルギー付与)放射線の方が間接効果の割合が高いという考えと一致するものである。次に抗酸化物質であるN-アセチルシステイン(NAC)併用下での活性酸素種発生を評価した。いずれの線種においてもNAC 300μMを併用することで照射による活性酸素種発生はほぼ抑制された。よって、NAC 300μM併用下での照射効果は、活性酸素種の関与しないいわゆる"直接効果"と考えることができると思われたため、WST-8アッセイにて照射後の細胞生存率を評価したが、HAC併用の有無で明らかな差は見られなかった。 3.本年度の研究の意義 線種による生物効果の差異として、細胞老化および活性酸素種発生に着目したが、明らかな関連をみいだすことはできなかった。今後、活性酸素種について別のアプローチを行う予定である。
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