2008 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞移植による神経再生医療実現化にむけてのホスト脳環境の至適化
Project/Area Number |
20390383
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 淳 Kyoto University, 再生医科学研究所, 准教授 (10270779)
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Keywords | ES細胞 / 神経分化 / 細胞移植 / 炎症 |
Research Abstract |
ES細胞やiPS細胞を用いた細胞移植治療に関する研究が盛んに行われているが、神経誘導に関する研究は多いものの移植技術に関する研究は少ない。あるいは、カスパーゼ阻害剤による細胞死抑制など個々の成果は報告されているが、分化過程にあり抗原提示量の少ない神経幹細胞の移植においてホスト脳の炎症と移植細胞の分化に着目した研究は少ない。我々はホスト脳の炎症が移植細胞に与える影響を解析し、ホスト脳環境を制御することによってよりよい細胞移植効果が得られるよう以下のような研究を行っている。 まずマウスES細胞由来神経幹細胞からの神経分化誘導において、IL-6がグリア細胞への分化を促進すること、IL-6の阻害によってその効果が抑制されることを確認した。現在はこの神経幹細胞を正常マウス脳に移植し、移植時におけるin vivoでの抗IL-6受容体抗体の効果を確認中である。 慢性脳低灌流モデルに関しては、マウスを用いてモデル作製の条件設定を行い、安定してモデル作製ができるようになった。モデル作製後の脳の免疫染色を行い、グリオーシスやマイクログリアの増加が起こっていることを確認した。現在はモデル作製前に抗炎症剤の投与を行い、炎症所見の抑制効果を解析している。 抗原抗体反応の側副経路に関しては、CTLA-4Igの腹腔内投与を行い、移植神経幹細胞の分化傾向に関する解析を行っている。途中経過として、CTLA-4Igの投与によってホスト脳の炎症・免疫担当細胞集積の抑制、移植神経幹細胞からのグリア分化の抑制がみられることを確認した。現在はそのメカニズムを明らかにするための実験を計画している。 これらの研究を進めることによって、全身合併症を最小限にする炎症・免疫抑制法の開発につながると期待される。
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