2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分裂制御遺伝子CHFRの機能解明および口腔癌の診断・分子標的薬の開発への応用
Project/Area Number |
20390519
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
時野 隆至 Sapporo Medical University, 医学部, 教授 (40202197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平塚 博義 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50165180)
荻 和弘 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40433114)
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Keywords | 癌 / 歯学 / トランスレーションリサーチ / 遺伝子 / ゲノム / 細胞周期 / 微小管阻害剤 |
Research Abstract |
CHFR(Checkpoint with fork head-associated and ring finger)は、様々な悪性腫瘍でエピジェネティック異常による遺伝子の発現消失が認められる重要な癌抑制遺伝子の一つである。CHFRの機能解明は、がんの発生、進展の機構を明らかにする上で重要であり、がんの分子標的治療の開発への可能性からも、国内外において関心が高い。本年度は、CHFRの新規機能として転写因子NF-κBの負の制御分子であることを初めて明らかにした。 まず、cDNAマイクロアレイ解析によりCHFRの過剰発現がNF-kB標的遺伝子群の発現を抑制することを確認した。CHFRの過剰発現はNF-kB転写活性を抑制し、CHFRのノックダウンはNF-kBの転写活性を増強した。このNF-kB転写活性の抑制は、E3活性非依存的な新規メカニズムによるものであることが示唆された。 大腸癌細胞HCTl16において、CHFRはNF-kB標的遺伝子の一つであるIL-8のmRNAレベルを顕著に抑制した。NF-kB結合配列を含むIL8プロモーター領域がCHFRによる転写抑制に重要であった。さらに、培養上清中に分泌されるIL-8タンパク質はCHFRの過剰発現により有意に減少した。IL-8は血管内皮細胞の遊走、浸潤を促進し血管新生に関わることで癌の進展に寄与することが既に知られている。CHFRの過剰発現によりHUVECの遊走および浸潤が有意に抑制され、この効果はIL-8依存的であった。異種移植マウスモデルを用いて、CHFRの血管新生への効果を観察したところ、CHFR発現アデノウイルスベクターの腫瘍内注射はコントロールと比較して有意に血管新生を抑制した。NF-κBは種々の悪性腫瘍で恒常的に活性化していることが報告されており、創薬ターゲットとして注目されていることから、CHFRが癌治療の候補となることを明らかにした。
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