Research Abstract |
本研究では,アムール川流域の土地被覆変化に伴う長期的な水文環境の変化を,氾濫原堆積物を用いて復元することを試みている.広大なアムール川流域の全域で堆積物の調査を行うのは困難である.そこで,中流域に位置する三江平原を中心に調査を行った.平成20年度は,三江平原に隣接するロシア国内で調査を行った.ロシア国内では,系統的な氾濫原堆積物表層の粗粒化は認められなかった.その理由としては,中国に比べロシアでは農地拡大が進行していないこと,三江平原という大きな堆積場の下流に位置することなどが考えられる.現地での土地利用の観察からも,ロシア国内では,農地の開発は平坦地に限られていることを確認した.一方で,春先の時期に森林火災が多発していることを確認した.また,ハバロフスクより下流では,本流の埋積によって閉塞された湿地や湖沼が多く見られる.三江平原とそれより下流(ハバロフスクより下流)とでは,最終氷期以降の地形発達過程が異なることが予想された.野外調査とは別に,JERS-1/SARデータを使用して,三江平原地域における土地被覆変化,特に湿地の分布と,地形条件について検討を進めた.地形分類の結果,三江平原周辺の地形は,現河床および氾濫原,自然堤防,段丘開析谷,低位段丘面,中位段丘面,高位段丘面,沼沢地,丘陵に分類された.主要河川沿いには低位段丘が発達し,現在の河川は,この面を僅かに開析して氾濫原を形成し,その中を蛇行しながら流れている.分類された地形面毎に土地利用,湿地分布を検討した。その結果,沖積低地,段丘上の湿地,1992年から1996年の間に広い範囲で湿地が耕地に転換されている。一方,山地や段丘開析谷,低位氾濫原では,顕著な湿地の減少は認められなかった。
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