Research Abstract |
本研究では,アムール川流域の土地被覆変化に伴う長期的な水文環境の変化を,氾濫原堆積物を用いて復元することを試みている.今年度は,中国三江平原において地形分類のための補足調査,年代測定試料の採取,現成氾濫原堆積物の連続試料採取を行った.また,ジャムスおよび長春の東北地理農業生態研究所において,文献資料等の収集を行った. 三江平原周辺の地形は,現河床および氾濫原,、自然堤防,段丘開析谷,低位段丘面,中位段丘面,高位段丘面,沼沢地,丘陵に分類される.各地形面上の堆積物断面を見ると,現成氾濫原を除く河成面では,いずれも下位から砂礫層、シルト粘土層,泥炭層の順で堆積している.これは,堆積から離水までの一連のプロセスを反映しているものと考えられる。しかし,現成の氾濫原では,シルト粘土層を覆って最表層に再び砂層が堆積している.環境同位体の分析からこうした最近の堆積物粗粒化は,最近数十年間に起こった事が確認された.したがって,こうした堆積物粗粒化は,人為的な土地利用変化の影響を反映しているものと推察される. 現成氾濫原を除く河成面上には,泥炭層が確認され,最大2mほどの厚さを示す,これら泥炭の放射性炭素年代測定結果を見ると,高位氾濫原および段丘開析谷では,5~6千年前に泥炭の生成が開始している.これは,段丘の開析に伴う河床低下が安定した段階で生成が開始したことを示す.一方,低位段丘上の泥炭層は,約1万年前に生成を開始している.低位段丘上の泥炭は,パッチ状に分布していて,段丘上に見られる緩やかな凹凸地形の凹部で厚く堆積していることから,こうした凹凸地形はサーモカルストの名残であろう。約1万年前に永久凍土の融解に伴って段丘面上にサーモカルストが発達し,その凹地にできた湿地に泥炭が形成されたと推定される. 野外調査とは別に,衛星データや水文データを使用して,三江平原地域における土地被覆変化,特に湿地の分布と,地形条件について検討を進めている.今年度は,キーヤ川流域の地形分析ならびに洪水解析を行った.その結果,氾濫原の湿地が,もっとも遊水地としての機能を大きく果たしていることが推定された.
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