2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ・マー系社会の地域セーフティ・ネットに基づく在来型難民支援モデルの構築
Project/Area Number |
20401010
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
湖中 真哉 University of Shizuoka, 国際関係学部, 准教授 (30275101)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00405143)
|
Keywords | 難民 / 東アフリカ / ケニア / 文化人類学 / 国際法学 / 国内避難民 / 紛争 / セーフティ・ネット |
Research Abstract |
平成21年度は、平成20年度の海外臨地調査成果を、日本アフリカ学会、日本文化人類学会、東北大学東北アジア研究センター主催日本・フィンランド国際セミナー"Social significance of animals in nomadic pastoral societies of the Arctic, Asia and Africa"、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フィールドサイエンス研究企画センター第6回フィールドサイエンス・コロキアム、お茶の水女子大学グローバル協力センター「子どもと開発研究会」、国立民族学博物館共同研究「生の複雑性をめぐる人類学的研究:「第四世界」の新たな記述にむけて」等、数多くの機会に口頭発表し、国内外の研究者、UNHCR・JICA職員等、幅広い参加者と討議を行うことができた。 平成21年度の臨地調査においては、以下の各点が明らかになった。1.ケニアは2009年1月頃から長期の旱魃にみまわれており、国内避難民は、紛争による被害に加えて、旱魃による被害に二重に苦しめられている。2.国家による安全保障が脆弱なため、サンプルはロロラと呼ばれる自衛集落を形成し、ローテーション体制による夜間警備を実施している。3.略奪によって家畜を全て失ったサンブルの避難民は、パランと呼ばれる物乞いシステムを利用して、畜群の再構築を試みており、小家畜49頭をすべてパランによって獲得した事例も見られた。4.サンブルとポコットの紛争はたんなる家畜略奪合戦ではなく、領土問題と深く関わっており、自然保護区の導入計画が、サンブルとポコットの間でゆるやかな共有状態にあった土地に対する意識を刺激した可能性がある。つまり、劣悪なガヴァナンスの下で危機に瀕した住民による自衛・相互扶助システムが、かろうじて共同体の存続を可能にしている極めて厳しい状況が解明できた。
|