2011 Fiscal Year Annual Research Report
四川省成都平原蒲江県域における秦漢代製鉄遺跡の調査研究
Project/Area Number |
20401032
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 正治 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 助教 (60457380)
笹田 朋孝 愛媛大学, 上級研究員センター, 講師 (90508764)
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Keywords | 許鞋〓遺跡 / 炒鋼炉 / 唐代 / 廃滓場 / 古石山遺跡C地点 |
Research Abstract |
平成23年度は、12月に四川省成都市蒲江県許鞋〓(きょわへん)遺跡を当初の計画通り、発掘調査、その結果、唐代以前の妙鋼炉および大規模な廃〓場を検出した。低丘陵縁辺部で、鉄〓散布が少ない地点に第1調査区を設定し、掘り下げたところ完全な形を保った円形の炉3基と破壊された円形炉1基を検出し。炉は正円形を呈し、直径約70cmを測り、炉内は椀状を呈している。炉の周縁部には方形の挟りが2カ所に設けられており、天井部分を支持する装置の一部と判断しており、復元される形態はドーム状の天井を有する妙鋼炉である。四川省では1950年代までこのタイプの妙鋼炉が稼働しており、その時代の類例調査の必要性を感じた。炉内の付着物には溶解した銑鉄に近似した肌が観察されており、熔銑を脱炭したとされる妙鋼炉であることは間違いない。周囲で検出された土器(陶器)から唐代以前に属する炉と想定されるが、 現在も類例調査を継続しており、その年代の確定を行っている。宋代の技術書、『天工開物』に記載され、考古学的には漢代以降一般化したとされる妙鋼炉は、その発見は五指にも満たない。さらにそれを性格に記録し、公表された例は皆無である。その意味においてこの許鞋?遺跡における発見は重要である。この第1調査区から約50m離れた地点で廃〓場を確認しており、その部分を深く掘り下げ、深さが2m以上に及ぶ廃〓場であることを確認した。鉄〓は小型・軽量で、内部がポーラス状のモノが多く、銑鉄生産に伴う鉄〓であることが想定された。時代は唐代前後と共伴した土器から想定される。 なお、かつて発掘調査した県内古石山遺跡C地点が、開発により、消滅の危機に瀕したため、許鞋?遺跡の調査に併行して、製鉄炉周辺法面精査を実施した。その結果、ここでも妙鋼炉1基を検出し、後漢代に属する製鉄炉の周囲に作業場と思われる空間が設けられていることを確認できた。
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