2009 Fiscal Year Annual Research Report
台湾総督府文書の研究-台湾近代化の実相に反映した明治官僚制の特質を探る-
Project/Area Number |
20402010
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
谷口 昭 Meijo University, 法学部, 教授 (20025159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 恵美子 名城大学, 法学部, 教授 (50278321)
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Keywords | 台湾総督府文書 / 旧慣と近代化 / 明治官僚制 / 東亜の近代法 / 東亜の近代法 |
Research Abstract |
「台湾総督府文書」のうち、「臨時台湾土地調査局公文類纂」の翻刻は約25万字を達成した。大学院生を中心とする研究協力者の学業との両立を考慮して、ややペースが遅い感は否めないが、4年計画の2年目で、実質的には1年余の作業であるから、やむを得ない現状だと評価している。その成果を基に「総督府文書研究の現状と課題」を検討するため、二つの研究集会を開催することができた。22年1月末には、原文書を所蔵する国史館台湾文献館から館長林金田氏と研究員・編集担当の3名を招聘し、国内関係者の参加を得て、ミニサイズではあるが総合的なシンポジウムとしたのである。一つは名城大学基礎法学研究会における、二つは法制史学会中部部会における報告・討論会であり、参会者による情報および知見の共有ができたと思う。これらによって明治日本が海外に残した、近代古文書としての文字情報を学界共通の資産とする端緒となったものといえよう。 上記の研究集会に先立って、21年4月には台湾を訪れ、国史館台湾文献館で翻刻文と原文書の照合を行うことができた。同館の好意により、ほぼ完全なデジタル画像が日常的に取得できる態勢が調っているので、作業は短時間で終了し、中央研究院で清朝期の関連史料を閲覧したが、これこそ台湾に蓄積された旧慣そのものであり、今後の調査方向に修正を加える手掛かりを得た。台湾大学がデータベース化した「法院文書」と併せて、訴訟から見る台湾近代化の実相に迫れるものとの感触を得ている。 日本が設置した台湾総督府が、清朝かち割譲された台湾統治、就中その近代化に大きな役割を果たしたことに疑いはない。但し1945年、第二次世界大戦の終結によって、その統治が終了し、中華民国・国民政府が接収した台湾の状況は、総督府の施策と比較しても大いなる関心の的となる。やや先走ることになることを承知の上で、接収期の具体的な姿を探るため、中華人民共和国・南京市を訪問した。南京大学教授・副教授との談話と、第二歴史档案館・南京図書館で国民政府の日次記を閲覧したが、档案館はデジタル化作業中のため多くの史料が閉鎖中。今後の調査の必要性を痛感する結果に終わったのが残念である。研究協力者によってこの期の成稿をかることが得ることができた。 以上、要するに、本年度の研究活動は、まだ手さぐり状態の部分が多いが、本テーマの解明には重要な意義があったとの実感を得たといえる。
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Research Products
(5 results)