2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの経済統合と発展途上国企業の多国籍化―マレーシアの事例
Project/Area Number |
20402019
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
穴沢 眞 小樽商科大学, 商学部, 教授 (40192984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 一史 九州大学, 経済学研究院, 教授 (80271625)
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Keywords | 東アジア / 経済統合 / 発展途上国企業 / 多国籍化 / マレーシア |
Research Abstract |
平成22年度は、引き続き海外進出を果たしたマレーシア企業での詳細なヒアリングを実施した。過去2年間の企業でのヒアリングを総括する段階に入り、電機・電子、自動車などの機械産業において、特に先進国出身の多国籍企業との取引を通じた技術移転などの経営資源の移転がマレーシア企業の競争優位の源泉となったこと、そして、これらの競争優位を活用して海外に進出するケースが多数存在することが裏付けられた。さらにはこれまでの取引関係を継続するために海外直接投資を行い、多国籍化するという図式がほぼ明らかとなった。伝統的な比較優位に基づく生産立地の変化のみでは説明されない、関係特殊性に基づく発展途上国企業の多国籍化のパターンといえる。 一方で、経済統合と発展途上国企業の多国籍化を総合的に説明する理論的な枠組みの構築は、その途上にある。貿易によらず海外進出を選択する要因は前述のような説明が可能であるが、さらに、フラグメンテーション理論や企業内貿易、フラッグシップモデルなどを援用し、産業を特定化することにより、両者の関係を取り込んだ理論的分析は可能となりつつある。 これまで、マレーシア企業の対外直接投資統計の整備が進んでいなかったが、ようやく、中央銀行と統計局がこれらを公表するようになった。しかしながら、産業ごとの統計ではないため、引き続き、個別企業の海外進出状況に基づいたデータの集積が必要であり、これらをマレーシアの共同研究者とともに継続している。 また、昨年度はマレーシアの共同研究者であるモナーシュ大学のChew博士を招聘し、小樽商科大学において研究会を開催し、これまでの研究の成果を公表するとともに、今後の研究に対する示唆を得た。企業でのヒアリングと並行してマレーシア工業開発庁、マラヤ大学、マレーシア科学大学、民間研究機関においてヒアリングと意見交換を行った。
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