2010 Fiscal Year Annual Research Report
発展途上国における最適著作権保護の調査研究:経済学的視点から
Project/Area Number |
20402023
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
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Keywords | 経済学 / 著作権 / 違法コピー |
Research Abstract |
本年度は、海外研究協力者(米国、ベトナム)とともに、海外調査として中南米諸国(メキシコ、コロンビア)、アジア諸国(インド、韓国、中国)を訪問した。調査の焦点は、所得格差と著作権侵害の関係を調べることである。メキシコ、コロンビアでは、富裕層の住む地域と貧しい者たちの住む地域は完全に二分されており、インフォーマル・セクターの主な収入源として違法コピー商品は重要なものとなっていた。中国、インドにおいても同様である。したがって、貧富格差における社会構造的な変革がない限り、著作権侵害はなくならず、そのこと自体政府は十分に認識している。最適著作権保護を考える場合には、単なる効率的な取り締まりだけではなく、所得格差の是正および中小産業の育成が、間接的ながら重要な要素であることが判明した。このことは著作権侵害のみに集中しがちな分析手法の限界を示しており、マクロ政策的な分析が必要とされていることを意味している。一方で、韓国並みの所得水準の国、および今回訪問した途上国の富裕層の間では、インターネットを使った著作権侵害が一般的であり、そのような階層には先進国が行っている取り締まりが有効であることも判明した。インターネット上の違法コピーはインフォーマル・セクターの所得にはほとんど結びついておらず、所得格差の問題は関係していないと考えられる。以上の考察は、一部ベトナムでのシンポジュームで報告された。また、途上国と先進国におけるゲーム論的な著作権保護の分析は、コロンビアでの国際学会で報告している。さらに、所得格差や一人当たりGDPといったマクロ的な要素を入れた考察については、データの収集および分析のメモを作成した。
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Research Products
(2 results)