2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジル日系コロニアにおける再生産構造をめぐる現地調査
Project/Area Number |
20402040
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
紀 葉子 東洋大学, 社会学部, 教授 (40246781)
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Keywords | 日系ブラジル人 / エスニシティ / 日本文化 / 文化資本 / 再生産 / 日本語 / 創られた伝統 / ジャポニスム |
Research Abstract |
前年度から引き続きサンパウロ老人クラブ連合会を拠点として聞き取り調査を行った。また、日本語学校への参与観察も引き続き行った。伝承言語としての日本語が日系コロニアの中で姿を消しつつあるのに対し、マンガやアニメーションを通して今日の日本文化に触れることによって日本語もしくは日本文化に関心を抱く若年層が増えつつあることが観察された。日系コロニアで日本語を教える「先生」は伝承文化としての日本語を教育したいという強い意欲を有しているにもかかわらず、今日のこどもたちにとって日本語は父母から家庭内で聞き覚えるものから、マンガやアニメーションを通して触れる未知なる文化と云う側面が認められるようになりつつある。日本で教育を受けた1世にとって日本語は母国語であっても、準1世をはじめ日本語よりも寧ろブラジル語で育った世代にとっては「外国語」であり、家庭内で用いられることも稀である。寧ろ、日本人としてのアイデンティティを確認するために、日本語を新たに獲得することをこどもに求める傾向性が顕著である。親の文化資本-とりわけ日本文化に関する文化資本-が豊かであるが故にこどもへと日本文化が相続されるというよりも、親の代で断絶しつつあった日本文化を新たに再創造する傾向があり、そのきっかけのひとつとして親の世代が日本からわたってきた際には現在のように爛熟していなかった日本のサブカルチャーがある。こうした傾向性が一過性のブームで終わるのか、それとも非日系人にも広がり得る日本文化のグローバル化の第1段階となりうるのか、引き続き現地調査を続けて明らかにしてゆきたい。また、その際に、本土の伝統文化と異なり、非日系人にも積極的に受容されるとともに若い3世以上の世代の関心も高い沖縄の文化状況と比較研究することも有効であろうと考える。
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