2010 Fiscal Year Annual Research Report
デンマークにおける地方分権制度とインクルーシヴ教育に関する研究
Project/Area Number |
20402069
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
眞城 知己 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00243345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是永 かな子 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 准教授 (90380302)
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Keywords | インクルーシヴ教育 / デンマーク / 地方分権 |
Research Abstract |
本研究の目的は、インクルーシヴ教育の展開に資する理論的根拠の構築と実践的裏付けを、インクルーシヴ教育と地方分権制度の進むデンマークをフィールドに、各地域間の相違と地方分権制度との関連性を切り口に明らかにすることであった。2007年の地域再編によって地方分権が進んだ結果、地域のフォルケスコーレで特別ニーズ教育を受ける子どもの数が増加し、表面的にはインクルーシヴ教育が進行したように見え、「インクルーシヴ教育の進展には地域に応じた柔軟性が必要なので地方分権が不可欠」という指摘にも符合するようにみえたが、別構造の存在が明らかとなった。すなわち、 1.地域再編によって特別学校が所在地のコムーン(市)に移管され、他市在住者の住所地コムーンは特別学校所在のコムーンに対して費用負担が必要だが、住所地内の学校なら費用を6割に抑制できるため、市内のフォルケスコーレに新たに特別学校や特別学級を設置するコムーンが増加した。フォルケスコーレでは、通常学級で学習する子どもが増えたわけではなかった。 2.デンマーク全体で地域再編前後の約10年間に通常学級以外での特別ニーズ教育の対象者は倍増した。これは上記構造で多くの子どもが住所地の学校に引き上げられた結果、特別学校に空き定員が生じ、そこに従来は対象外だった市内在住者が新たに特別ニーズ教育の対象者として通うようになったという構造に起因した。それまで対象外だった子どもの大半は、自閉症に関連する新しい診断基準の浸透と関係していた。 3.地域再編前のアムト(県)ごとの拡大特別ニーズ教育の方針の違いが、各市の対応にも依然として影響を残していることも明らかとなった。 以上から、地方分権を進める中でのインクルーシヴ教育制度の構築にあたっては、財政も含めた自治体の教育施策間の調整問題や、各市の対応方針の明確化と具体的な展開計画の検討が不可欠であることを示していると結論づけられた。 のべ1,000種類以上の資料を収集した。研究成果は学会やDVD資料として公開した。
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Research Products
(3 results)