Research Abstract |
21年度3月に現地調査を行っており,22年度のフィールドシーズン(2,3月)は調査を行っても期間中に研究が終了しないことが見込まれたため,当初より調査予定を組まず,採集試料の分析を中心に行った.金沢大学予算により,新しい質量分析装置が入ったため,長谷川は,分析システムの構築・確立を進めた.炭素同位体比を連続測定する体制が整った.その手法の構築,手順に関しても,ほぼ確立した. マンガオタニルート(チューロニアン),マルボロ地区オーズ・ニッド川(セノマニアン),オーズ・ニッド川支流のソウピットガリー(セノマニアン/チューロニアン階境界:C/T境界)の試料について分析を進めた結果,C/T境界の炭素同位体比スパイクを,欧米と十分に対比できる解像度で確認した.C/T境界には酸化的環境を示す赤色層があるが,大型化石が一時的に産出しなくなる「無化石帯」が存在し,南緯70度の高緯度地域における太平洋の海洋環境の特殊性が示された.このことは,当時の地球全体の環境を評価する上で,またモデル構築の上でも極めて重要である.研究協力者により,渦鞭毛藻化石層序が検討され,セノマニアンからチューロニアンへの種の入れ替わりは,まさに炭素同位体比スパイクに相当する層準付近の無化石帯内にあることが確認されている.チューロニアンの変動も,ヨーロッパの標準曲線とほぼ一致していた.セノマニアンでは極めて炭素同位体比の変動に乏しい.これらは論文執筆中で,近日中に投稿する予定である. 海洋環境の指標とする手法2種類について,北陸地域に分布するジュラ-白亜系手取層群を対象に手法開発,応用を行い,古環境評価を行った.これは長谷川を筆頭とする2編の国際論文として公表した.これらの手法はニュージーランドの白亜系に記録される海洋事変の評価への応用も期待できる.
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