2009 Fiscal Year Annual Research Report
海外の地震国における歴史的組積造建築物の耐震性に関わるモニタリング調査
Project/Area Number |
20404013
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
花里 利一 Mie University, 大学院・工学研究科, 教授 (60134285)
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Keywords | 歴史的建築物 / 組積造 / モニタリング / 世界遺産 / 耐震性 / 修復 / 国際協力 |
Research Abstract |
本研究は、海外の地震国における歴史的組積造建築物を対象としたモニタリング調査を通じて、長い間、強地震動に耐えてきた建築物および近年の地震で被災した建築物の耐震性を明らかにし、それらの修復方法の検証を行うものである。 平成21年度も、20年度に引き続き、長い歴史において強地震動に耐えてきたギリシャ・アテネのパルテノン神殿を主な対象とした調査を実施し、アテネ工科大学、ギリシャ文化省、アクロポリス修復事務所の協力を得て、建造物と地盤の詳細な常時微動測定を行うとともに、平成20年度に設置した地震計によるモニタリング観測を継続して実施している。常時微動の詳細測定では、コーナーにおける梁接合部の動的挙動の一体性を確認した。さらに、内陣壁と第2柱列の動的挙動の一体性も確認した。これらの動的挙動にみられる一体性は、構造全体の耐震性に寄与するものである。建物の詳細な常時微動測定では、固有振動数を確認するとともに、すべての水平構面内の振動モードを得た。また、アクロポリス丘の丘上と丘麓において、地盤の微動測定を実施した。地震計は、2008年9月に基壇および建物頂部に設置して観測を始めているが、2010年3月現在、強震記録は得られていない。今後も地震モニタリングを継続する。2010年4月には、地震計を2台増設する予定である。このパルテノン神殿の耐震調査では、アクロポリス修復事務所において、研究打ち合わせを行うとともに、微動の調査結果についてセミナーを行った。解析的検討では、引き続き、多質点系モデルおよび個別要素法の適用可能性について検討した。ギリシャにおいては、ギリシャ人研究協力者がモニタリング調査を実施しているアテネ郊外の世界遺産ビザンチン教会・ダフニー修道院および2009年地震で被災したダフニー修道院を視察し、保存修理事業とモニタリング状況について把握した。 ところで、当初の研究実施計画に挙げた、フィリピン・パオアイ教会の現地調査がフィリピン側の事情により困難になったため、平成21年度は、地震国であるネパール・カトマンズの歴史的組積造建築物の耐震調査を行う研究計画とし、カトマンズ歴史地区において、建築遺産(三重塔・五重塔および共同住宅建築物)の常時微動測定を実施した。その結果、三重塔と五重塔の固有振動数はともに約2Hzであることを明らかにした。 2006年ジャワ島中部地震で被災したインドネシア・プランバナン寺院での地震モニタリングおよび亀裂変位・環境モニタリングは計画どおり実施している。ハンサ祠堂の地震観測では、微小地震記録が3個得られている。シヴァ祠堂での亀裂変位・温湿度モニタリングによれば、構造は安定していることを確認している。
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Research Products
(5 results)