2010 Fiscal Year Annual Research Report
海外の地震国における歴史的組積造建築物の耐震性に関わるモニタリング調査
Project/Area Number |
20404013
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
花里 利一 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60134285)
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Keywords | 歴史的建築物 / 組積造 / モニタリング / 世界遺産 / 耐震性 / 修復 / 国際協力 |
Research Abstract |
本研究は海外の地震国における歴史的組積造建築物を対象としたモニタリング調査を通じて、長い間、強地震動に耐えてきた建築物および近年の地震で被災した建物の耐震性を明らかにし、それらの修復方法の検証を行なうものである。 平成22年度も平成20年度,21年度に引き続き、長い歴史において強地震動に耐えてきたギリシャ・パルテノン神殿を主な対象として、研究協力者であるアテネ工科大学、ギリシャ文化省、アクロポリス修復事務所の協力を得て調査を実施した。平成22年5月には、パルテノン神殿にすでに設置している地震計をリプレイスしている。2010年9月2日には、マグニチュード4.3の地震が発生し、パルテノン神殿基壇において約0.7Galの微小地震が観測された。この地震記録は微小であり、アクロポリス丘の地形効果や建物の応答特性に関する十分な知見を得るまでには至らなかったが、今後、観測を継続的に進め、地震応答に用いる解析モデルの妥当性の検証を行う。さらに、パルテノン神殿の修復・災害史を調査し、歴史地震との関係を明らかにするとともに、歴史地震による地震動レベルを推定した。その結果、アクロポリス丘麓における地震動レベルは約0.2Gを超えていないと推定された。また、ギリシャ世界遺産ダフニー修道院、同オシオス・ルーカス修道院におけるモニタリング調査は、アテネ工科大学(研究協力者)によって地震モニタリングおよび亀裂変位モニタリングが実施されており、地震で生じた亀裂の修復によって固有振動数が変化し、修復によって耐震性が向上する効果が明らかにされた。 2006年ジャワ島中部地震で被災したインドネシア・世界遺産プランバナン寺院におけるモニタリング調査では、2010年7月からシヴァ祠堂で地震モニタリングを始め、9月12日に約8Galの地震動と建物の応答を記録した。シヴァ祠堂では亀裂変位のモニタリングを行っているが、この地震による亀裂の進展等はみられず、構造的に安定していることを確認し、シヴァ祠堂の修復計画を立案する上で、重要なデータとなっている。 2010年11月には、パルテノン神殿に関する本研究の成果を示し、長い歴史において地震に耐えてきた歴史的建築物の耐震性を議論する場として、海外研究協力者を招聘し、国際セミナー『五重塔はなぜ倒れないか、ギリシャ神殿はなぜ倒れないか』を開催した。
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Research Products
(4 results)