2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代的な都市づくりを目指した「日本租界」の都市空間構成の実態調査
Project/Area Number |
20404017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
趙 世晨 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 准教授 (80304848)
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Keywords | 日本租界 / 天津 / 杭州 / 漢口 / 街路空間 / 都市軸 |
Research Abstract |
本年度の現地調査結果及び外交資料の解読によって、各日本租界に関して以下のことを確認することができた。 (1)天津の日本租界による都市軸の形成:天津の日本租界においては、現在でもその街区形状、街路、建物等、当時の姿を留めているものが多い。特に街区ごとまとまって現存しているため、当時の街並みが残っており非常に貴重である。これは一つに、租界開設当時、泥沼地であった土地を埋め立てたことによって、中国人が居住していた中心市街地と日本以外の外国租界地とをつなぐ交通、商業の都市軸を作ったことと、さらにそれに交わる公共施設の軸といった、明確な都市基盤を築いたことが大きい。これによって、日本租界は、現在でも天津の重要な都市骨格として機能し、現存し続けているのである。 (2)杭州は中国八大古都の一つで、1895年に結ばれた下関条約によって杭州市に日本租界が設置されたが、他国に比べて租界の開設時期が遅れたため、立地場所は市街地から遠く、また当時の「五館政策」の失敗によって経済的にも発展せず、長期的に耐えうる都市の骨格を造りえなかったため、当時の空間構成や形態はほとんど都市再開発によって改変されている。 (3)街路空間構成が維持されている漢口日本租界:漢口の日本租界は旧ドイツ租界に隣接しているが、街区の大きさや街路の幅はドイツ租界に比べて小さく、街路空間は変化に富んだつくりとなっている。租界当時の建築物の多くは更新されているが、街区や街路のスケールは維持されており、日本租界は現在の都市空間の形成に大きな影響を与えていることが確認された。
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