2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代的な都市づくりを目指した「日本租界」の都市空間構成の実態調査
Project/Area Number |
20404017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
趙 世晨 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 准教授 (80304848)
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Keywords | 日本租界 / 都市空間 / 都市形成 / 天津 / 重慶 / 杭州 / 蘇州 / 漢口 |
Research Abstract |
本年度は最終年度であり、これまでの調査結果を踏まえて日本租界の総合調査を実施した。さらに史料文献の解読によって日本租界に関する以下のことを明らかにした。 (1)下関条約が結ばれた後、厦門や沙市等を含む中国の多くの都市で租界開設の特権を得ていたが、実際に開設され、正式に日本租界を名乗ったのは、重慶、天津、蘇州、杭州、漢口の5地であった。その数はイギリス租界に次いで多かったが、しかし日本租界の殆どが当時の中国人が居住している市街地から遠く離れているため、日本政府の期待通りの発展を遂げることはなかった。 (2)天津の日本租界の造営は、20世紀初頭により日本領事館直属の専管居留地事務所が担当し、またその後東京建物株式会社の招聘により建築家真水英夫の指導を受けて、家屋の造成を行ったため、5つの日本租界の中でも最も完成度が高く、さらに当時のフランス租界と旧城の中間に位置する地の利もあって、当時はもちろん、現在でも天津の中心市街地の形成に大きな影響を与えていることがわかった。 (3)天津以外の日本租界は近年の都市再開発によって更新されているが、程度の差があるものの、租界の空間構成が維持されており、歴史的建築物は重要文化財として指定されているケースも多い。これらは今後、中国の近代都市文化遺産として「日本租界」の再評価のための貴重な素材となることを指摘した。 (4)これまでの現地調査及び史料・文献を整理し、日本租界に関する文字情報、都市と建築の空間情報(配置図、建物の立面、街並みのスケッチ等)を総合したデータベースを構築した。
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