2008 Fiscal Year Annual Research Report
急速な氷河後退に伴う北極陸上生態系の炭素シーケストレーションの長期変動と将来予測
Project/Area Number |
20405010
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中坪 孝之 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (10198137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 雅己 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (70370096)
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Keywords | 分光反射特性 / 土壌クラスト / 氷河後退 / 高緯度北極 / Salix polaris / 炭素固定量 |
Research Abstract |
現地の盛夏に相当する7月下旬から8月中旬にかけて、3名(中坪と研究協力者2名)が高緯度北極スバールバールに滞在して野外調査を行った。また、同地域の衛星データを入手し、基準的な解析を行った。おもな成果は以下の通りである。 1.衛星データを用いた広域マッピング解析に用いるため、遷移初期の植生、氷河等の分光反射特性を携帯型分光反射測定器を用いて測定した。 2.氷河後退直後の主要な植生の一つである土壌クラスト(シアノバクテリア、藻類、菌類地衣類、コケの原糸体等が絡み合った地表面の群集)を対象に、オープンフローの光合成呼吸測定システムを用いて、呼吸速度と環境要因との関係を調べた。その結果、純光合成速度は0℃付近では正の値を示すものの、10℃では多くの試料が負の値になる(呼吸消費が光合成生産を上回る)ことが判明し、温暖化の影響を強く受けることが示唆された。 3.キョクチャナギ(Salix polaris)は遷移後期の優占種で、高い生産力をもつため、氷河後退後の生態系の炭素固定量を大きく左右すると予想される。そこで、キョクチャナギの侵入の最前線で定着状況を調べ、本種の定着の制限要因について調査した。その結果、キョクチャナギの定着は先駆種であるムラサキユキノシタの存在や土壌発達とは無関係で、新規加入個体が非常に少ないことが拡大を制限していることが明らかになった。 4.衛星データ(ALOS)と過去の航空写真の解析を行い、過去から現在の氷河末端の位置を特定するとともに、キョクチャナギの定着速度を推定した。
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Research Products
(15 results)