Research Abstract |
本研究は先行研究が全くない,ラオス北部メコン河支流の山間地河川ウー川中流域を調奪地とし,雨季と乾季,年に二回のフィールド調査を実施し,魚種同定と生態情報の収集,卵・仔稚魚の調査,水文環境・景観調査および水域環境測定等の環境特性の調査を行う.調査によって得られた情報を基に山間地河川に生息する魚類の産卵場所・仔稚魚の成育場所の特性を解明し,水産資源の適切な管理と持続的利用に向けての具体的な方策を提言し,当該国・地域に貢献することを目的とする. 平成23年度は調査地の魚種の同定が終了した.10目,25科,156種類の淡水魚が生息し,コイ科の一種は未記載種であること,ラオス初記録種であるバラタナゴとゴクラクハゼを確認した.また,複数の固有種の存在に加え,ラオスの他水系と比較して雲南およびベトナム北部のみに分布する種や東アジア亜区の淡水魚類相を構成する魚類が多数含まれていることから,ウー川を中心とするラオス北部を生物地理学的に「北ラオス域」として区分することが妥当であるという考えに至った. 流下ネットの調査の同定結果においては,平成21年度雨季では,ナマズ目のふ化直後,ならびにふ化から2日ほど経過した3タイプの前期仔魚,および魚卵が確認された.平成22年度雨季では平成21年度と異なるタイプのナマズ目ふ化直後仔魚,および卵のうを有するコイ科仔魚が確認された.平成22・23年度ともに日中における仔魚の流下は認められなかった.平成22年度乾季では,コイ目の,卵のうを有するふ化直後のものを含めて,少なくとも10タイプ,タニノボリ科3タイプ,ハゼ科1タイプの仔魚が多数確認された.雨季と同様に日中における仔魚の流下は認められなかった.これらの結果から,雨季に比べ,乾季の方が種類・数ともに仔魚が多く,山間地河川では乾季に繁殖する魚種が多く,それらは河川それ自体を産卵・成育場所として利用していることが明らかとなった.
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