2009 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアに分布するジアルジアの遺伝的多型形成維持機構の研究
Project/Area Number |
20406007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
所 正治 Kanazawa University, 医学系, 講師 (30338024)
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Keywords | ランブル鞭毛虫 / ジアルジア / 種内多型 / 分子寄生虫学 / 進化 / 腸管寄生原虫 / インドネシア / 熱帯医学 |
Research Abstract |
ジアルジア(Giardia intestinalis)のまん延地域においては繰り返しの感染暴露および慢性感染が常在するが、その感染率は成人では極めて低いレベルに留まり、ジアルジア感染に対する獲得免疫の存在が示唆されてきた。一方、ジアルジアの種内には、A-Gの7遺伝子型を含む著しい種内多型が知られるが、宿主免疫の成立におけるその意義は不明である。そこで、本年度は、インドネシアの学童を対象に、糞便(保育園101、小学校276、中学校130)および尿(保育園121、小学校315、中学校118)の同時採取を実施し、ジアルジアの遺伝子型同定と尿中抗ジアルジア抗体価の解析を実施した。糞便検査によるジアルジアの陽性率は、各年齢層において5-6歳(16.8%)、7-12歳(10.9%)、13-15歳(6.9%)となり、低年齢層で高い感染率を確認した。また遺伝子型同定では、AとBがほぼ同数検出された。尿サンプルと培養粗抽出抗原を用いた酵素免疫測定法での尿中IgA・IgG・IgMの評価では、糞便検査陽性例でのシスト排出量の低下が高抗体価群で有意に認められ、明らかな重症化阻止効果を認めたものの、高年齢層でも抗体価の上昇は認められず、また、高抗体価群においても感染阻止効果は認められなかった。以上の結果から、ジアルジアのまん延地域の成人に認められるジアルジア抵抗性は、少なくとも分泌型の液性免疫によるものとは考えられず、従来の"常識"とは異なる結果となった。次年度以降では、この抵抗性の詳細について遺伝子型毎に更なる解析を予定している。
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