2010 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおけるHIV流行モデルの検証と流行阻止の試み
Project/Area Number |
20406012
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
景山 誠二 鳥取大学, 医学部, 教授 (60252706)
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Keywords | 国際共同研究 / フィリピン / エイズ / HIV / C型肝炎ウイルス |
Research Abstract |
本研究の目的は、HIV感染者の少ない国における病原体サーベイランスを通じてHIV流行の初期像を早期に把握し、本格流行を避ける方法を樹立することである。対象地域はフィリピン共和国、特にセブ地域を選択した。C型肝炎ウイルス(HCV)感染者を監視できる稀な地域であり、言換えれば血液感染によるHIV感染が起こりやすい地域である。 2010年初めにセブ地区のHCV抗体保有者にHIVキャリアが多数みられ(75%、44/59)、これらの集団が核となり本格流行へ移行するのが危惧された。系統樹を解析した結果、セブ地域に流行する多くのHIV株は、単一の、しかも他の地域や国際データベースの株とは異なる一群を形成していた。したがって、HIVの伝播は最近急速に起きたものと考えられる。これらのHIV流行集団は全例HCV抗体を持っており、以前からHCVに感染していたことが疑われた。そこで、上記の単一クラスターに属したHIVに感染したキャリアから、HCV遺伝子を分離しその配列を決定して遺伝子系統樹を解析したところ、近縁なHIVに感染しているにもかかわらず、HCVは相互にgenotypeさえ異なる程多様であった。この結果は、HCVに先に感染していた個体に、遅れてHIVが感染したことを意味する。したがって、HIVが広がらない前に、近縁な一群のHCV集団を特定しておけば、初発のHIVが侵入した際に、その他のハイリスク者(近縁なHCV保有者)へのHIVの拡散を阻止できるものと期待された。さらに、HCVのデータベースをより大きくすることにより、新たなHCV株の侵入の事実を特定でき、HIVが侵入する以前からHIV流行への「核」となる集団を特定できるものと期待される。 類似HCV株保有集団へのHIV侵入例はまだ少ない。こうした事例が増加するのか、2次感染例を阻止できるのかが、今後の焦点になる。
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