2008 Fiscal Year Annual Research Report
ネパールでのロタウイルスワクチン導入が重症下痢症および流行株に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
20406013
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中込 治 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70143047)
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Keywords | ロタウイルス / ワクチン / 血清型 / 流行株 / G12 / ネパール |
Research Abstract |
ネパールは世界の最貧国の1つであり、ロタウイルス下痢症による乳児死亡率が著しく高い。現在2つの弱毒生ワクチンが開発され世界規模での導入が始まっている。本研究ではネパールへのロタウイルスワクチンの導入を念頭において,その前半では、基本的に先行研究で確立した臨床情報および検体収集のための調査拠点とネットワークを継続して活用することにより、ワクチン導入前のネパールにおける重症ロタウイルス下痢症の発生状況(基幹小児病院における調査)および野生株の流行動態(ロタウイルス陽性検体の分子疫学的解析)を調査する。これは,ワクチンによる介入のない状態での基盤資料としてきわめて重要である。初年度である本年度では、カンティ小児病院の5歳未満の下痢症入院患者のうち,研究内容を説明し,保護者の同意が得られた患者を対象として,臨床情報(年齢,性,発症日,採取日,重症度スコアを計算するための下痢・嘔吐・発熱・脱水症状の有無)を取得し,臨床データのデータベース化を開始した。また,臨床検体は,約1000検体を採取した。ELISAによるロタウイルスの検出は,現地への調査旅行の際に技術移転を行った海外共同研究者の責任下に行われた。ロタウイルスは,外来患者(22%)よりも入院患者(37%)に高頻度に検出された。検出されたロタウイルスの遺伝子型は,G12が優勢なウイルス株であり,ネパールにおいてこの遺伝子型のウイルスが恒常的に存在している可能性がますます高まった。したがってネパールでのG12ウイルス株の継続した監視は地球規模での分子疫学の上からも必要である。
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