2010 Fiscal Year Annual Research Report
ネパールでのロタウイルスワクチン導入が重症下痢症および流行株に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
20406013
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中込 治 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70143047)
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Keywords | ロタウイルス / ノロウイルス / 血清型 / 流行株 / G12 / ネパール |
Research Abstract |
ネパールにおけるロタウイルスワクチンの導入を目前にし、首都カトマンズの最大の小児病院であるカンティ小児病院で5歳未満の重症下痢症患者の便検体を4年間(2005-2009)にわたって収集して得た3429検体について解析した。入院患者から得られた便検体2135検体をEHSAで検査したところ、ロタウイルス陽性検体は32%に相当する691検体であった。一方、外来患者から得られた1294検体のロタウイルス陽性率は14.5%であった。これらの検出株の遺伝子型は、G12P[6](30.6%),G2P[4](15.5%),G1P[8](11.1%),G9P[8](10.7%),G12P[8](9.5%)であり、ネパールでは依然として血清型G12の優位が継続していた。世界の中でもG12株がこのように高頻度に出現しているところはなく、しかもその大半が現行のワクチン株に対して完全に異型であるG12P[6]であったことは、このようなサーベイランスの重要性を示している。最近、われわれのブラジルでの研究も含めて、発展途上国の乳児におけるノロウイルス感染の重要性が明らかになってきているので、これをネパールの検体で調べたところ、入院患者から得られた2116検体からのノロウイルスの検出率は8.5%、外来患者から得られた1282検体では9.1%であった。入院患者と外来患者におけるノロウイルスの検出率がほとんど変わらないことは、ロタウイルスの場合とはきわめて対照的であり、これら2つのウイルスの疫学上の大きな特徴である。近年、世界的にはgenogroup IIノロウイルスのvariantであるGII.4が急増し、かつ、変異を頻繁に起こしているが、このような世界的流行株がネパール国内でも優位を占めているのか、独自の株が流行しているのかを調査することが重要である。
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