2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国における多剤耐性結核菌の分離状況とその背景因子に関する調査研究
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20406024
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 和義 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (10253973)
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Keywords | アジア / 結核 / 耐性菌 |
Research Abstract |
中国広東省広州市にある中山大学医学部附属第三医院呼吸器内科及び広州胸科医院を訪問し、結核の診療状況について調査を行った。各病院の結核の診療規模は、疑い症例も含めると、年間外来患者数は第三医院呼吸器内科、胸科医院それぞれ1, 181人、約80, 000人、入院患者数は136人、約5, 000人1であった。第三医院呼吸器内科は結核病棟を有さず、結核性胸膜炎などの非排菌例の診療は行うが、塗沫陽性結核患者は胸科医院へ紹介されることが分かった。胸科医院は広州市及び広東省の結核診療の中核病院であり、その内部に結核検査センターを有し、日常検査業務に加え、結核菌の遺伝子解析やフローサイトメトリーを用いた末梢血リンパ球の表面抗原解析なども実施している。ただし、病床数が375とその役割にしては少ないため、入院は基礎疾患のある患者や薬剤耐性結核のような難治症例に限られる。通常は塗沫陽性結核であっても市中のクリニックでの外来診療が行われ、問題点のひとつと考えられた。広東省の2005年における統計では、活動性結核、塗沫陽性結核の罹患率はそれぞれ10万人当たり201、33であり、年齢との関係ではわが国同様高齢になるほど増加し、65歳以上では活動性結核が>500であった。また、広東省における多剤耐性結核(MDR-TB)は6.3%(初回治療5.3%、再治療15.7%)であり、今回の調査では、2008年に胸科医院に入院した患者の中で、MDR-TBが再治療例を含めて16.7%、超多剤耐性結核(XDR-TB)が2.0%であることが明らかとなった。その中から、MDR-TB23株、XDR-TB2株についてDNAを抽出し、PCRにてrpo B、kat G、inh A、ahpC遺伝子を増幅し、その塩基配列の解析を進めているところである。併せて、患者の宿主要因について調べるために、末梢血リンパ球におけるCD3、CD4、CD8、CD56の発現をフローサイトメトリーで検討するとともに、服結核菌抗原に対する応答性についてQuantiFERON TB-2Gによる解析の準備を進めている。また、20081年9月30日には、中国から3人の共同研究者を仙台に招き、第1回日本・中国多剤耐性結核フォーラムを開催し、日本と中国の多剤耐性結核、抗酸菌検査、結核感染管理の現状について講演を実施する1とともに、相互に情報交換を行った。
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