Research Abstract |
我々は,スリランカMedical Research Instituteにて臨床的に狂犬病と診断された16例のヒト脳検体を収集し,蛍光抗体法(FAT),迅速イムノクロマト法(RICT),及びRT-PCR法による狂犬病ウイルス(RV)の検出を試みた。WHOが推奨するFATでは16例中,3例が陰性であったが,我々が先に開発したRICTでは,この3例のうち2例は陽性となり,15/16の検体が陽性と判定された。RVのN及びG遺伝子を標的としたRT-PCR法を行ったところ,14例でPCR産物の増幅が認められた。RT-PCR法において陰性を示した2例のうち1例はNested PCR法によって再度検討を行なったところ,N遺伝子の存在が確認された。RT-PCR法の結果をGolden standardとすると両者の検出感度(Sen.)と特異性(Sp.)は,FATでSen.=87%,Sp.=100%,一方RICTではSen.=100%,Sp.=100%であった。以上の結果から,RICTは有用な診断方法である可能性が示唆された。 現在,N,P,G,及びL遺伝子のヌクレオチド配列を解析することにより分子疫学的な解析を進行中である。G及びN遺伝子については,これまで報告されてきたスリランカの野生株とほぼ同様のクラスターを示したが,G遺伝子のC末端からL遺伝子のN末端を含む領域に位置する,Pseudo遺伝子領域について解析を行なったところ,猫から分離されたRVが,ひとつのクラスターを形成している可能性が示唆された。また,スリランカにおける,麻痺型RVの調査についても,倫理委員会に申請中である。 一方,バングラデシュにおいては麻痺型RVの調査のため脳脊髄液を現在収集中であり,RICTによるRVの検出と評価については倫理委員会に申請中である。
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