Research Abstract |
H22年度は,前年度までに明らかにされた人間の視覚特性を考慮した質感表現を発展させ,物体表面の凹凸形状に対する視認性のよいリアルタイム表現に注力した.通常のCG制作では,表面の凹凸をハイトフィールド(高さ情報)のデータとして与え,バンプマッピング処理をすることなどで素材の質感表現を行う.一方,凹凸が特徴的なシボ素材を観察すると,凹んだ部分が遮蔽により影になるために暗くなっているように見えるが,この現象は単なるバンプマッピング処理では表現は困難である.そこで,アンビエントオクルージョンをシボ素材表面の陰影付けに適用し,表現の対象となる幾何形状を操作することなく,凹み部分の遮蔽による陰影付けを行う手法を提案した.アンビエントオクルージョンとは,擬似的な間接照明効果を演出する手法として提案されたものであり,拡散する光の遮蔽度合いを示す.これは,物体表面の折り目や隙間では,遮蔽により光が四方周辺に反射されず,結果として暗くなる現象を意味する.これにより,凹み部分の視認性が良好なバンプマッピングを施すことが可能になり,物体表面の質感表現を向上させることが確認できた.また,遮蔽処理の範囲を変更することで,表現物体の詳細度を考慮した計算時間の効率化も提案した. 一方,物体の変形に伴う表面への皺発生のモデルを構築し,主として皮革素材に特有の微細凹凸による質感表現を向上させた.提案手法では,指定された入力形状から主曲率を算出し,最大曲率と最小曲率にそれぞれの閾値を設定することで,皺を付加する領域を検出する.続いて,皺が入る方向となる最小曲率の方向を求め,表面に皺の起点となる点を分布し,各点から皺が入る方向に従って,動径基底関数を用いてシワの形状を生成した.これにより,形状に所望の搬付けを表現対象の詳細度に合わせてプロシージャルに付与することが可能となった.
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