Research Abstract |
本研究では,情報システムを用いて人間の認知過程に好影響を与え,知的能力の発揮を活性化するための支援内容を明らかにすることを主眼におくため,技術開発のみに陥らないようシステムの開発は適宜,被験者による運用評価をうけ,システム開発にフィードバックしながら進める計画を立てた. 計画に沿って行ってきたパイロット評価とシステムの改良を経て,最終年度である平成22年度は,開発したシステムをソフトウェア開発論に関する大学院の講義で実運用し,有用性を検証する本評価を,協調学習のプロトコル分析,アンケート分析,理解度確認テスト,インタビューにより多角的に行った.その結果, 1. システムを活用して協調学習を行った群(実験群)と,システムを活用せずに協調学習した群(統制群)について,会話内容をプロトコル分析したところ,統制群ではスライドの見栄えに関する発話や領域知識を教えあう会話が多くの割合を占めたのに対し,実験群では学びのあり方の会話が劇的に増加することが確認された. 2. 学びについての自己評価基準(理解できたと考えて良いとする基準)の厳格化を促す効果が確認された. 3. 実験群の理解度が統制群よりも高くなり,特に相対的に難易度の高い問題になるにつれ,実験群と統制群の得点差が大きくひらくようになることが確認された. 4. 上記の総合結果として,システムに組み入れた支援機能および開発した学習スキームは学習者のメタ認知活動を活性化し,メタ学習(学びの方法そのものの学習)を促す効果が確認された. プレゼンテーションを教材としてメタ学習を促す学習スキームが大学院での実際の講義において実行可能であるとともに,メタ認知的学習の観点より有用性を示す成果が得られたことは,学びの方法そのものを学ばせる教育を実現するという教育システム情報学の新しい展開を現実的なものとした意義がある.
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