Research Abstract |
ロボットが人間や他者ロボットと知的に協調するには,他者を観察し,その動作を認識することが重要である.そのためには,連続的な動作画像からある特徴領域を注視し,その状態変化を検知する必要がある.本研究では,Scanpathと呼ばれる人間の視線走査の特性を明らかにするとともに,その知見を応用し,ロボットの他者動作認識のための注視機能を実現することを目的とする. 平成20年度は,実験用ロボットシステムの構築およびScanpath計測の基礎実験を行った.実験用ロボットシステムとして,2台の車輪型移動ロボットを使用し,一台は観察用,もう一台は動作用とした.観察用ロボットにはパン,チルト,ズーム制御が可能なカメラを搭載し,画像処理用PCに無線で送信できるようにした.画像処理PCでは画像入力ボードを用いて動画像処理を行うビジョンシステムを構築した.動作用ロボットには,5自由度マニピュレータを搭載し,対象物のピックアンドプレイス操作を可能にした。Scanpath計測の基礎実験については,構築したロボットシステムにおいて,動作ロボットが物体操作のためにハンドを動作しているシーンを観察ロボットにより記録し,その画像を被験者が観察したときの関心領域を計測し,特性を解析した.その結果,そのような動作の観察ではトップダウン的な処理が優位にはたらくことがわかった.また,ボトムアップ画像処理によるScanpath予測を行った結果,中心窩に近いサイズで高い予測性能が得られることがわかった. 本研究は,心理実験により計測された人間の注視特性を解析し,ロボットの注視機構に応用するという点に特徴があり,動作認識のための有効な手段を確立することが期待できる.他者動作認識は将来ロボットが人間と共存するために必要不可欠な機能であるため,本研究は極めて意義深い.
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