2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500195
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松川 睦 Nihon University, 医学部, 助手 (90318436)
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Keywords | 匂い物質 / ストレス / 癒し / 経験 / 環境要因 / 感性 / 神経活動マップ / 嗅覚情報処理 |
Research Abstract |
昨年度の研究において、経験や生育環境に存在しなくても反応できる"癒し"効果のある匂い物質が存在するのかどうかについて検討し、2種類の匂い物質をその候補として見出したが、そのストレス緩和過程が異なっている可能性が示唆された。そこで本研究では、捕食動物の匂いによって誘発されるストレス反応に関わる神経回路の中でどの過程に、癒し効果のある匂い物質が関与するのかを明らかにすることを目的とし、まず、嗅球の中での神経細胞の活動を電気生理学的に検出し捕食動物の匂いに反応する神経細胞を特定した。続いてこれらの部位に刺激電極を刺入し、嗅球の直接刺激による脳内ストレス関連部位での神経活動マップと、捕食者の匂いを直接嗅がせた動物の神経活動マップとを比較・検討した。神経活動マップは脳内で活性化した神経細胞を最初期遺伝子c-Fosに対する免疫組織化学的手法で標識して作成した。その結果、まず捕食者の匂いに反応する神経細胞は、嗅球の内側部と外側部に分かれて存在していた。そこで、嗅球の直接刺激は、内側部のみ、外側部のみ、内側部と外側部の両方と3群に分けて検討したところ、ストレス関連部位での神経活動パターンが匂い物質を直接嗅がせた動物と同様に見られたのは、内側部と外側部の両方を同時に刺激した群のみであった。つまり嗅球内で、内外に分かれて存在する反応細胞の両者共に活性化されないとストレス反応を惹起しないと考えられた。このことは、嗅球内での活動が内外のどちらか一方でも変化すればストレス反応の抑制につながる可能性が高いことを意味し、他の匂い物質が嗅球の中で局所的に競合や抑制に作用でき得ることが示唆された。現在"癒し"効果のあると思われる匂い物質の作用について更なる解析を進めている。
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