2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500195
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松川 睦 日本大学, 医学部, 助手 (90318436)
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Keywords | 匂い物質 / ストレス / 癒し / 経験 / 環境要因 / 感性 / 神経活動マップ / 嗅覚情報処理 |
Research Abstract |
げっ歯類は捕食動物の匂いに対して先天的に恐怖・ストレス反応を示すことが知られている。これに対して我々はこれまでの研究で、経験や生育環境に存在しなくてもこれらのストレス反応を緩和する、いわゆる癒し効果のある匂い物質が存在することを明らかにしてきた。さらに、ストレス緩和効果を示す匂い物質にはその活性化神経細胞の分布に相違が見られる事などから、少なくとも2種類の異なる作用機序がある可能性を示してきた。そこで今年度はこれらの作用機序の相違について解析を行った。いわゆる癒し効果の期待される匂い物質の候補としては、薔薇の香り(バラ臭)もしくは木の香り(ヒノキ臭)を用い、実験動物(マウス)に捕食動物の匂いとこれらのバラ臭もしくはヒノキ臭を嗅がせ、脳内で活性化した神経細胞を最初期遺伝子c-Fosに対する免疫組織化学的手法でマッピングし、比較・検討した。またストレスの指標としては血中のホルモン(ACTH)濃度を測定した。その結果、バラ臭は、捕食動物の匂いに選択的に反応する脳領域における活動神経細胞数を減少させた。つまり、ストレス誘発神経活動を相殺することで緩和効果を示すものと推察された。一方でヒノキ臭は、匂いに関係する脳領域全体の脳活動を一斉に活性化した。つまり、周囲の神経細胞を全体的に活動させることで、捕食動物に特異的な反応を覆い隠し(マスキングして)ストレスの惹起を抑制したものと考えられた。またこれまで脳内の分界条床核の内側部がストレス反応の発現に重要ではないかと示唆されていたが、本研究により、同神経核の内側部の活動だけでは実際のストレス反応と一致せず、内側部と外側部の活動比が重要であることが示された。これらの知見は嗅覚情報処理過程の解明に重要であるだけでなく、ストレスを緩和する機序としての礎となるものと考えている。
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