Research Abstract |
本年度では,特徴空間のタスク間知識移転方式の開発を主に行った.以下に成果をまとめる. 1.逐次マルチタスク学習問題に対し,過去のタスクで得られた特徴空間を新しいタスクへ選択的に知識移転する方式を開発した.具体的には,過去に得られた判別軸のクラス分離性を逐次的に計算し,現在のタスクのクラス分離性を効果的に向上させる判別軸のみを選択的に知識移転する方式を考案した.これにより,従来の追加学習型線形判別分析(ILDA)で得られる判別軸が(クラス数-1)に制限されていた問題を解消するとともに,少ない訓練データでクラス分離性の高い特徴空間を構成できるようになった,機械学習で通常用いられるベンチマークデータを用い,得られた判別特徴空間の有効性を識別率で評価した,その結果,提案したアルゴリズムによって,新しいタスクで判別軸が効果的に追加され,知識移転がない従来アルゴリズムに比べて認識率が改善された. 2.前述したとおり,従来のILDAでは,判別軸を(クラス数-1)しか求められないという問題があった.この問題を解決するため,判別特徴空間の補空間に対して再帰的に線形判別を適用し,(クラス数-1)以上の判別軸をオンラインで求められる追加学習型再帰的フィッシャ線形判別アルゴリズムを開発した.(1)で開発した知識移転手法をこれに組み込むことで,今後,マルチタスク学習への拡張が期待できる. 3.平成18〜19年度基盤研究(C)では,過去に学習した識別器の知識を新しいタスクに移転し,少ない訓練事例で高い汎化能力を得られるニューラルネットモデルを開発した.このモデルでは,タスクごとに異なるニューラル識別器を生成するため,タスク数が増えると構成が大規模化するという問題があった.これに対し,一つのニューラルネット識別器で複数タスクを学習できるよう改良し,知識移転の効果をさらに高めることに成功した.
|