Research Abstract |
認知制御機能における加齢変化を明らかにするために,数字選択課題(課題切替)・漢字選択課題(エラー反復)・朝食課題(二重課題,方略抽出)・ディストラクタ記憶課題(情報処理の抑制)の達成を,日内変動(実験実施時間の午前/午後比較),年齢群(大学生/65歳以上健康な高齢者),使用母語(英語/日本語使用者)を独立変数として,引き続き分析を行った. 1.エラー反復現象と日内変動の関係について,高齢者についてのみ非最適時間帯(午後)により多くのエラー反復が観察されることが示された.若年群に日内変動の効果が見られなかったことについて,大学生の起床後の経過時間を含め,さらに検討を行う. 2.数字選択課題の反応時間分析から,課題切替の効果に使用言語(英語vs日本語)の影響が示され,日本語使用者に系列処理を促すため遅延提示を行っても同様であることが示された.しかし両言語で若年群のみが「不適合刺激への反応において,課題切替による促進効果(反応時間が短い)」現象を示すことから,新型の認知的制御としての追究する. 3.朝食課題では主課題の難度を3段階としたところ,副課題の有意味度による主課題への効果が存在すること,副課題の有意味度は主課題の難度が副課題に与える影響を弱めることが示され,いずれも年齢群間で共通であった. 4.1-back線画再認の刺激上に表示される言語刺激(ディストラクタ)の記憶については,単語完成課題では若年群のみ,漢字同定課題,漢字知覚的同定課題では両年齢群でプライミングが観察されず,英語圏での研究成果とは異なって結果が得られている.日本語環境下での潜在記憶と加齢の関係について,再度検討の必要性が示された. 以上の結果を踏まえ,さらに課題間に通底する認知的処理と加齢の関係について検討を行っていく.
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