Research Abstract |
本研究課題は,入出力3相データ{x_<ijk>}に焦点をあて,それに適用できるように主成分分析法(PCA)の拡張手法を研究開発することを目的とする.ここで,x_<ijk>は,入力(刺激)iに対して個体(被験体)kが示す出力(反応)jの大きさを表し,入出力データに対するPCAのモデルが,「成分を入出力の媒介変数とした線形ネットワーク」で表現されることを研究基盤にすえる.本年度は,以下に記すように,入出力データに対する三相主成分分析の解の正則変換法を研究開発した.x_<ijk>を(i,j)要素とする個体kの入出力データ行列をX_kで表すと,三相主成分分析の一つであるTUCKER2の解は,X_k〓AH_kB'=ASS^<-1>H_kT^<'-1>T'B'=A^*H^*_kB<*'>と表せ(SとTは任意の正則行列),正則変換に関する不定性を持つが,成分行列A^*=ASとB^*=BTおよび核行列H^*_k=S^<-1>H_kT^<*-1>が単純構造を達成し,さらに,H^*_k=S^<-1>HkT^<'-1>によって表現される個体差が最小になるような正則行列SとTを求めるために,目的関数f=α||AS-A_T||^2+β||BT-B_T||^2+γΣ_k||S^<-1>H_kT^<'-1>-H||^2を最小化するS, T, Hを求める交互最小二乗アルゴリズムを開発した.ここで,α,β,γは所与の正の定数,A_TとB_Tは単純構造を持つターゲット行列,そして,Hは各個体の核行列H^*_kを集約したいわば個体間共通の核行列である.このアルゴリズムでは,ターゲット行列選定のために,バリマックス回転後の成分行列を強調化するプロマックス法を用い,Hの推定には,一定数の0要素以外は未知要素の行列とする制約つきシンプリマックス法と呼べる方法を採用した.そして,正則行列SとTの推定には,同時プロクラステス分析の特異値分解リパラメトリゼーション法を用いた.シミュレーションによって開発手法が真のパラメータをよく再現できることを確認した上で,印象評定データへの適用を通して,合理的な解釈ができる解が得られることを例証した.
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